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アフリカから キジの洞穴
ザマニザカレ(むかしむかし)、今からざっと一〇〇〇年ほど昔のお話です。
ザンジバルのある村に、ダウ船に乗ったペルシャ人がやってきました。ペルシャ人たちは、その村が気に入って、村人に、大工仕事を教え、ペルシャ風のモスクや家を作って住みつきました。
ペルシャ人は、外敵に備えて村に城壁を築き、その城壁の中で、長年いい暮らしをしていましたが、あるとき、ポルトガル人が、ザンジバルに侵入し、城壁を破ってなだれ込んでくると、ポルトガル人は、あっという間にペルシャ人を追い出して、代わりに自分たちがそこを占領して我が物顔で振る舞いました。
その村には、ペルシャ人に仕込まれた腕のいい大工がたくさんいましたが、中でもキジという大工は、たった一人で、二〇人分の仕事をこなし、珊瑚と漆喰であっというまに見事な家を建ててしまうという見事な腕前でした。
ポルトガル人は、その村に建っているペルシャ風の建造物の見事さに目を見張り、それがすべてキジという大工の仕事だと知ると、ここをポルトガル風の街にするために、キジを使おうとしました。
しかし、キジにしてみれば、自分を一人前の大工にしてくれたペルシャ人を殺し、ザンジバルになだれ込んできたポルトガル人の手下になって、ポルトガル人の喜ぶ街にするなんてとんでもないことでした。
キジはポルトガル人の命令にそむいて、彼らの城に出向かなかったので、ポルトガル人は、
「黒人の大工風情が、生意気な」
と怒り、手に手に鉄砲を持って、キジを捕まえにやってきました。
キジは、村中を逃げ回り、森を逃げ切ると、海岸に出ました。海岸には隠れる場所がありません。ポルトガル人たちは目を血走らせ、キジを殺しにやってきます。
キジは途方にくれながらも、海岸に沿ってひたすら走っていると、ポルトガル人たちが追いついてきて、すぐ後ろにまで迫ってきました。しかも、キジの目の前には大きな岩が立ちはだかっています。今が、自分の死ぬ時だと悟ったキジは、逃げるのをやめて、その場に座ると、アラーに祈りを捧げました。
すると、目の前の岩が、ガガーンと大きな音を立てて割け、ぽっかりと人が通れるほどの穴があきました。キジは、「神の思し召しのままに」と唱えながら、ゆっくりその洞穴の中に入って行きました。
キジが洞穴の中に入ると、岩はまたも、ガガーンと大きな音を立てて閉じ、穴はなくなってしまいました。
ポルトガル人たちは、キジが消えた岩の前に行って、すみずみまで調べてみましたが、岩には割けた跡すらありません。それでもなお不思議に思って、岩の前でうろうろしていますと、岩がまたしてもガガーンと大きな音をあげて割け、ぽっかりと穴があきました。
ポルトガル人たちが、我先にその洞穴を覗き込むと、真っ暗な洞穴の中から、ブーンフンフン、ブーンフンフンと異様な音が聞こえてきて、そのうち蜂の大群が飛び出して、ポルトガル人を刺しまくりました。
ポルトガル人たちは、ほうほうの態で自分たちの屋敷に戻ると、それきりキジの行方を探さなかったそうです。
キジの逃げた洞穴と、キジの建てたペルシャ式のモスクは、今でもその村に残っています。海に向かってぽかっとあいたキジの洞穴には、誰も入ろうとはしません。
だから、真っ暗な洞穴が、どこまで続いているのか、誰も知りません。
そして、キジがそれからどうなったかも、誰も知らないのです。
その村の名は、キジムカジ。キジというムカジ(腕のいい職人)がいたことを忘れないようにと、村人たちが、キジの消えた洞穴の前でつけたそうです。
今日の話は、これでおしまい。
ほしけりゃ持ってきな。いらなきゃ、海に捨てとくれ。
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