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アフリカから 三本の矢
ハポ ザマニザカレ(むかしむかし、あるところに)、手広く農業をやっている男がおりました。この男は、妻と二人で小さな畑から始めて、五〇年後には、村の半分以上の畑を持つようにまでになりました。
男には三人の息子がいて、揃って立派な若者に育っていました。
男は、村で火事が起こると、三人の息子を引き連れてすぐ火事場に駆けつけ、砂をかけたり、麻袋でバンバン叩いたりして消し、火の中に赤ん坊が残されていると聞けば、火の中に飛び込んで助けました。子供が海でおぼれたと聞けば、三人の息子を引き連れて、すぐに海に飛び込み、子供を助けました。金を拾えば、もちろんすぐラジオの落し物ニュースで流します。
とにかくいいことばかりする人だったので、村人全員から慕われていました。
そんな彼も、年には勝てません。ある年を境に、めっきり体が弱くなっていきました。
いよいよベッドから起き上がれなくなって、男は自分の死期を悟りました。
ある朝、男は妻を枕元に呼んで、こう言いました。
「妻よ、私はもうそろそろ神の元へ行かねばならない。朝飯を食べたら、息子達を部屋に呼んでおくれ」
三人の息子は、朝飯も食べず、すぐに父親の元へ駆けつけました。男は、ベッドに寝たままで息子達に語りかけました。
「息子達よ、私にはもうお前達を火事場や海といった現場で教えることはできないから、きょうは、お前達に、これから生きていく上で大切なことを言い遺しておく。
一つ、人のものを盗るな。
二つ、人をだますな。
三つ、人をばかにするな。
どうだ、ちゃんと覚えたか」
三人の息子達は、声を揃えてその三つを復唱すると、涙を流してこう言いました。
「父さん、ありがとう。僕達は、けっしてこの三つを忘れません」
男は、うんうんとうなずくと、今度は自分の枕の下から三本の矢を取り出しました。
見ると、その三本の矢は、縄でしっかり束ねてあります。男は、その三本の矢を息子達の前に出すと、「この矢をまとめて折ってみろ」と言いました。
まず長男が、次に次男が、最後には三男が試してみましたが、誰も三本の矢を折ることができませんでした。
男は、三本の矢を束ねてあった縄をするするほどいて、矢を一本ずつにすると、一人に一本ずつ矢を渡し、「この矢を折ってみろ」と言いました。
今度は、長男も、ぽきん。次男も、ぽきん。三男も、ぽきん。それぞれ簡単に折ってしまいました。その様子を見ると、男はおもむろにこう言いました。
「この矢はお前達だ。一人一人なら耐えられないことでも、兄弟三人で力を合わせれば必ず何とかなるものだ。わしが死んでも、兄弟三人いつも助け合って生きていくのだぞ。決して一本ずつの矢になるんじゃないぞ」
男はそう言い遺すと、二週間後に天に召され、家族も村人も、一人残らずこの男の死を悲しみました。
そのあと、三人の息子達が父親の言いつけを守ったかどうかまでは、とんとわかりません。
話は、これでおしまい。
気に入ったなら持ってきな。いらなきゃ森に捨てとくれ。
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