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アフリカから ビホーレ伝説
ザマニ ザ カレ(むかしむかし)、ザンジバルが奴隷貿易で栄えていたころのお話です。ブンギという村に、ビホーレというアラブ女性がおりました。
ビホーレは、珊瑚づくりの大きな屋敷に住み、広大な土地を所有し、香辛料をはじめ、マンゴー、オレンジ、さとうきびなどの作物を外国に輸出していました。ビホーレは、当時なら当たり前のことですが、一人で何百人もの黒人奴隷を所有していて、すべての作業は奴隷にさせていました。このブンギ村の土地が、今もいい畑でいられるのは、みんな先祖が奴隷として鞭打たれ、血と汗を流しながら耕したからなのです。
その当時の奴隷は、それはそれは悲惨なものでした。ご主人の言いなりにならなければ、何をされるかわかりません。鞭で叩かれても、理由もなく家族を殺されても、誰にも文句は言えません。少しでも抵抗したり、文句を言ったりしたら、もっとひどくぶたれるか、犬をけしかけられるか、殺されるかしかないのです。奴隷とは、しゃべる家畜程度の存在でした。そんなふうでしたから、奴隷たちはいつもおびえ、笑顔を忘れたまま生きていました。
ビホーレは、所有地を回り、汗を流して働いている黒人奴隷の体を嘗め回すように見て、好みの男がいると、後で屋敷の奴隷をやって、屋敷に連れて来させました。また、奴隷船が出港する日は、船の中まで行って、自分好みのたくましい黒人男が積まれているのを見つけると、そのまま屋敷に連れて帰りました。
ビホーレは、年頃を過ぎても誰とも結婚しないで、もっぱら黒人男とのジキジキ(セックス)に溺れていたのです。
屋敷に呼ばれた男奴隷は、自分たちの小屋とは似ても似つかぬ豪華な屋敷の中に入るとよけい不安になり、おどおどした目をしてビホーレを見つめました。ビホーレは、美しいドレスを身にまとい、嫣然とした笑顔で男奴隷を迎え入れると、腹いっぱい馳走を食わせ、ベッドに誘いました。
屋敷に連れられて来た日から始まる男奴隷の役割は、ただただビホーレを満足させること。男奴隷は、毎日腹いっぱいの馳走を食ってアラブ女性が抱けるのですから、夢心地です。彼らはすぐにこの生活が死ぬまで続いたらいいのにと願うようになりました。そして、その願いは、必ず叶うのでした。
ビホーレは、男が一度でも自分を満足させずに果てると、翌朝優しい声でこう言いました。
「お前とすごしたこの何日かは、素晴らしい日々だった。どうもありがとう。この金はそのお礼だよ。これを持って家へお帰り」
男奴隷は、なぜ急に家に帰されるかわかりませんでしたが、ビホーレからたんまり金を渡されると、有頂天になってこう言いました。
「ビホーレ様、あなたは本当にいいお方だ。またいつでもお屋敷に呼んでください」
そして、男奴隷が金を握って玄関に向かうと、ビホーレは優しい声でこう付け加えるのでした。
「ああ、お前に言うのを忘れていたが、家から出るときは、裏口から出ておくれ」
男奴隷が裏口から出ると、左右から待ち構えていた屋敷付きの奴隷たちが襲い掛かり、男をつかんで引きずり倒しました。一人が踏みつけ、一人が男の頭を起こし、振りかざしたパンガ(長刀)で男の首をばっさり切ると、男はまるで首を切られたにわとりのように、いつまでもびくびくと手足を動かしていました。
屋敷奴隷たちは、首のない男奴隷の死体がすっかり動かなくなると、ビホーレが男にやった金を死体から取って、ビホーレに渡しに行くのが役目でした。どの男も、死んでからも金をがっちり握っているので、首切り役の奴隷たちは、死体から金を取り外すのが一番大変だったそうです。
ビホーレは、奴隷から血まみれの金を受け取ると、一枚一枚丁寧に布で血を拭い取り、次の犠牲者に渡すまで、ベッドの横の小さな引き出しにしまいました。そして、ビホーレは、次の日からまた鞭を持って外に出て行くのでした。もちろん、すばらしいジキジキができる奴隷男を探しに行くために。
こうしてビホーレの餌食になった男奴隷の数は、一〇〇人とも二〇〇人とも言われています。そんなむごい仕打ちをしたビホーレでしたが、ばあさんになって、死ぬまで大金持ちのままだったそうです。
ビホーレが、天国に行けたかどうかまではわかりませんけどね。
ビホーレの話は、これでおしまい。
ほしけりゃ持ってきな。いらなきゃ海に捨てとくれ。
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