アフリカから 腹ぺこミザ

[アフリカから]

腹ぺこミザ

島岡由美子

Shimaoka Yumiko

 ハポ ザマニザカレ(むかしむかし、あるところに)、ミザという臨月を迎えた妊婦がおりました。
 貧しいミザの家には、炭の焚き付けに燃やす物がないので、料理する時には、いつも隣の家に火をもらいに行っていました。
 その日も、ミザは、大きな腹を抱えて、隣の家に火をもらいに行きました。
 隣の奥さんは、ちょうど昼飯の支度をしている最中で、肉のたっぷり入ったうまそうなココナッツシチューが炭の上でぐつぐつと煮えていて、台所中に、いい匂いが漂っていました。
「あの、きょうも火を分けてください」
「ああ、いいよ、ちょうど炭がついているからもってきな」
 隣の奥さんは快くミザに火を分けてやりました。
「ありがとうございます」

 ミザは、火をもらって家に帰ると、わざとその火を水で消し、もう一度隣の家に行きました。隣の家では、さっきのシチューが、炭の上でもっとうまそうに煮えていました。
「あの、火つけに失敗して、分けていただいた炭まで消えてしまったので、もう一度火を分けてください」
「ああ、いいよ。まだ炭がついているから、もってきな」
 今度も隣の奥さんは、快くミザに火を分けてやりました。

 ミザは、火をもらって家に帰ると、今度もわざとその火を消して、大きなおなかを抱えて、隣の家に行きました。隣の家では、さっきのシチューがすっかり出来上がって、家族みんなでうまそうに飯を食べていました。
「あの、火つけに失敗して、分けていただいた炭まで消えてしまったので、もう一度火を分けてください」
「ああ、いいよ。今日はもう火を使わないから、いくらでも持って行きな」
 ミザは火のついた残り炭をたくさん持って家に帰ったものの、歩きすぎと空腹で目が回り、そのままどたんと倒れると、流産して死んでしまいました。貧しいミザの家には、火をもらったって、料理するものなんか何もなかったのです。
 妊婦は、とかく腹が減るもの。
 腹の大きな女に食べ物を見せたら、ちょっぴりでもいいから、分けておやりなさい。

 話は、これで、おしまい。
 気に入ったなら持ってきな、いらなきゃ川に捨てとくれ。