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アフリカから 腹ぺこミザ
ハポ ザマニザカレ(むかしむかしあるところに)、金持ち夫婦と貧乏な夫婦が、隣り同士で住んでいました。
貧乏な夫婦には、十一人の息子がいましたが、金持ち夫婦には、たった一人の娘しかいませんでした。その村には、他に一人も子どもがおらず、大人ばかりの村だったので、金持ちの一人娘が大きくなったら、隣の貧乏夫婦の十一人の息子の誰かの嫁になることは、村の誰もが知っていることでした。
金持ち夫婦は、どうしても娘を貧乏人にやるのがいやで、どうせなら十一人の息子など、みんな死んでしまえばいいと、いつも願っていました。
しかし、なかなかそうはいきません。娘が美しく成長するにしたがって、隣の十一人の息子たちもたくましい若者に育っていきました。
金持ち夫婦は、娘が年頃になっても嫁に出すのをしぶっていましたが、娘が美しくいられる時期は短く、その時期を逃したら、女はおしまいということも、ちゃんとわかっておりました。
金持ち夫婦は、娘が年頃になってずいぶん経ったある日、隣の貧乏な夫婦を屋敷に呼びつけてこう言いました。
「私の娘もそろそろ年頃になったから、嫁にやらなくてはと思うのだが、どうだね、君の家ではマハリ(婚資金)を払う用意があるのかね?」
貧乏な夫婦は、首を横に振りながら言いました。
「いやいや、うちはごらんのとおりの貧乏暮らしで、一シリングの蓄えもありません」
すると、金持ちは、豪快に笑って、
「そうだろうと思っていたよ。しかし、娘を嫁にやるのに、婚資金なしでやるわけにはいかない。そこでだ。金がないなら、勇気で払ってもらおうじゃないか。
この村には何百年も昔から生えている高いヤシの木がある。そのてっぺんには、実が一つだけなっている。しかし、その木はあまりにも高いので、誰もその実を採った者がいない。
私が言いたいのは、村で一番高いヤシの木のてっぺんから採ってくる実は、金にも勝る価値がある、つまりは、君たちの息子が金で婚資金を払えないなら、そのヤシの実一つで、娘を嫁にやろうと言っているのだ」
貧乏な夫婦は、
「そんな、あんな高い木に登れなんて、息子たちに死ねと言っているのと同じじゃありませんか。そんなことできっこありませんよ」
と言いましたが、婚資金を払えないなら仕方ないだろうと言われて、がっくり肩を落として帰って行きました。
家で待っていた十一人の息子たちは、それを聞くと、皆口を揃えて言いました。
「ヤシの木に登るなんて、金を稼ぐより簡単さ」
次の日、早速長男が、村で一番高いヤシの木に登ろうとしましたが、10分の1まで登った所で、口笛を吹いた拍子に足を滑らせ、地面に腰を打ちつけて、死んでしまいました。
その次の日は、次男が、ヤシの木の10分の2のところで下を向いた拍子に足を滑らせ、頭から落ちて死んでしまいました。
その次の日は三男が、10分の3のところで、唄を歌った拍子に足を滑らせ背中から落ちて死んでしまいました。
その次の日は四男が、そのまた次の日は五男が、そのまた次の日は六男が、……十日めには、十番めの息子がヤシの木の10分の10、つまりはてっぺんまで登ったのに、ヤシの実を採ろうとした拍子にバランスを崩して、木からまっさかさまに落ちて死んでしまいました。
金持ち夫婦は、隣の家から毎日葬式の知らせがくるたびに、心の中で笑っていました。隣の息子たちが、次々と、ヤシの木に登っては落ち、登っては落ちて死んでいくのが、うれしくてしかたがなかったのです。
貧乏な夫婦には、もう息子一人しか残っていません。
夫婦は、十一番めの息子に言いました。
「お前まで死んでしまったら、もうわしらには息子が一人もいなくなってしまう。
金持ちの嫁などもらわなくていいから、このまま家にいておくれ」
しかし、十一番めの息子は、
「父さん母さん、心配しないで。
僕は、この十日間、毎日兄さんたちがヤシの木に登るところと、落ちるところを見てきました。どの場所が危なくて、どういう風に気をつければいいのか、僕には充分わかっています。僕が絶対ヤシの実を採って、金持ちの娘を嫁にして、父さん母さんに楽な暮らしをさせてあげるよ」
と言って、ヤシの木に向かいました。
十一番めの息子は、両手両足でがっしりとヤシの木に抱きつくと、十人の兄さんたちがやっていたのと同じように、両手と両足を交互に上に滑らせながら登っていきました。
一番めの兄さんが落ちたところを越え、二番めの兄さんが落ちたところを越え、三番めの兄さんが落ちたところも越えました。それでも、口笛も吹かず、下も見ず、唄も歌わず、黙々と登っていきました。
10分の8を越え、10分の9を越え、ついに10分の10、つまりてっぺんまでたどり着きましたが、十番めの兄さんのことを思い出し、慎重に足を置く場所を探してから両手を離して、ヤシの実に手をかけました。
十一番めの息子は、ヤシの実をもぐと、下に投げ落とし、耳を澄ませました。ヤシの実が、地面にぶつかるどすんという音を聞いて初めて笑顔になると、ヤシの木の上で、大きな声で歌いました。
♪娘さん、娘さん、ヤシの実をどうぞ。
でも、この実を食べたら、僕と結婚してくださいよ。
金はなくても、勇気のあるこの僕が、
あなたのために採ってきた、甘い甘い実ですから
ルルルルルゥ〜♪
村で一番高いヤシの木に登って実を採った十一番めの息子は、金持ちの一人娘と結婚し、貧乏暮らしから抜け出して、幸せになりました。
今日の話は、これでおしまい。
気に入ったなら持ってきな、いらなきゃ海に捨てとくれ。
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