アフリカから にわとりと犬

[アフリカから]

にわとりと犬

島岡由美子

Shimaoka Yumiko

 ハポ ザマニザカレ(むかしむかし、あるところに)、動物の国がありました。
 王様ライオンの結婚式が近づいて、国中の動物達が招待されました。
 でもただ一人、犬だけには招待状が来ませんでした。犬は乱暴者で、国中のものから嫌われていたからです。犬はしょんぼりして、隣のにわとりの家に行きました。
「にわとり君はいいなあ」
「どうしてさ、犬君」
「だって、君の顔を見たって、誰も怖がらないだろ。でも僕の顔はこんなに怖いから、みんなに嫌われてしまうんだ。王様ライオンからの招待状も来なかったし……。王様の結婚式には、すごいご馳走が出るって話だぜ。ああ、僕も食べたいなあ。何かいい考えはないかなあ」
「犬君が、これから僕に絶対乱暴しないで、友達になるって約束するなら、僕にいい考えがあるよ」
「もちろん約束するよ。もう僕と君は友達さ。で、一体どうするんだい?」
「それはその時までの秘密さ。とにかく君は僕を信じていれば、ご馳走にありつけるよ」

 いよいよ王様ライオンの結婚式の日がきました。動物達は、朝早くから集まって、料理が出るのを今か今かと待ち構えています。猿が、兎に言いました。
「まだにわとり君が来ていないね、どうしたのかな」
「あら本当だ、でもまだご馳走が出来上がってないから大丈夫よ、まだ間に合うわ」
 実はそのとき、にわとりは、もうご馳走の並ぶテーブルの下の隅で、砂をかぶって隠れていたのでした。にわとりは、夜明けに、コイコッコーと、ひと鳴きして、すぐ城にやってくると、誰からも見えないように自分で自分に砂をかけて、じっとここにうずくまっていたのです。
 一方、犬はお城の裏口で、
「にわとりの野郎、本当に俺にご馳走を食わせてくれるんだろうな」
 と言いながら、腹をすかせて待っていました。

 結婚式場のテーブルに、全部のご馳走が出揃った時、にわとりは、コイコッコー、コイコッコーと鳴きながら、砂まみれの体で飛び出し、一気にテーブルの上を飛んで反対側に着地すると、そのままコケコケバタバタ走って逃げていきました。
 テーブルの上のご馳走は、全部砂だらけ。これではもう食べられません。
 でも、結婚式で浮かれている王様ライオンは、気前よく言いました。
「砂を浴びた料理なんて、ぜんぶ棄ててしまえ。すぐに料理を作り直すんだ。俺は王様、こんな料理、いくらだって作れるさ」
 花嫁ライオンは、そんな王様ライオンを、頼もしげに見つめていました。

 さて、こちらはお城の裏口。王様の家来達が、砂だらけになった結婚式のご馳走を棄てに来ました。
 砂なんて気にならない犬にとっては、目のさめるようなご馳走です。犬は、夢中で棄てられた砂だらけの料理に顔を突っ込んで、ガッツ、ガツガツ食べ出しました。
 数分後に、城内の結婚式場から必死で逃げてきたにわとりも、やっと裏口にたどり着きました。にわとりにとっても、料理に砂がついていようがいまいがまったく気になりません。犬と並んで砂だらけのご馳走をつつこうとした瞬間、犬は牙をむいて、こう言いました。
「ガルルルルッ! 俺の食い物に手を出すな! ちょっとでも俺の食事の邪魔をしたら、お前も食っちまうぞ!」
 あんなに仲良くすると約束したのに、やっぱり犬は、乱暴者のまんまでした。
 にわとりは、とにかく食われちゃ大変と、コケコケバタバタ大慌てで逃げていきました。
 今でもにわとりが犬の姿を見ると、コケコケバタバタ逃げ出すのは、むかしむかしにこういうことがあったからなのです。

 今日の話は、これでおしまい。
 気にいったら持ってきな、いらなきゃ森に捨てとくれ。