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アフリカから 勇気ある男
ザマニザカレ(むかしむかし)ある山の上に、貧しい母子が住んでおりました。
父親のいないその家では、一人息子が小さい頃から一生懸命働いていましたが、家は貧しく、その日の食べ物にも事欠くありさまでした。
ある日、その国の王様が、ほんの気まぐれで、
「一晩中、たった一人で海岸にいられるような勇気ある男がいたら、一生困らないだけの金をやろう」
と言い出し、勇気ある男を国中から募りました。
しかし、どの男も、何が出てくるかわからない真っ暗な海の前で、ザザーン、ザザーンという波の音を聞いているうちに、恐ろしさと寒さに耐え切れなくなって逃げ出してしまうか、気がふれて海に入り、溺れ死んでしまうかのどちらかでした。
母親思いの息子は、貧乏暮らしから抜け出すために、母親に内緒で、勇気ある男に名乗り出ました。それを知った母親は、泣いて止めましたが、もう名乗り出てしまった以上、行かなければ王様に殺されてしまいます。母親は涙ながらに、海に向かう息子を見送りました。
その晩、母親は、ひとり海岸にいるであろう息子を思い、少しでも息子がさびしくないようにと祈りつつ、一晩中、山のてっぺんで火を焚きました。
翌朝、王様が海辺に行ってみると、きのう名乗りをあげた孝行息子が、昨晩と同じように元気な顔で立っていたので、すっかり驚きましたが、
「こんな寒くて恐ろしい夜の海の前で、一晩中いられる奴がいるはずがない、お前は何かいかさまをしたのだろう。正直に言え」
とすごい剣幕で孝行息子に言いました。
孝行息子は、
「はい、私は昨夜からこの海岸にいましたが、山の上に住む母が、私がさびしくないようにと祈りを込めながら、一晩中火を焚いていてくれましたので、その山の上の火を見ていたら、恐怖も寒さも薄れ、勇気が湧いてきました」
と答えました。
王様は、それを聞くと、
「ということは、お前はその火で暖をとっていたということだな。そんないかさま野郎に金はやれん。とっとと、山に帰れ」
と大声で言いました。
本当は、朝、元気な若者の顔を見たとたんに金が惜しくなった王様は、なんとか金を出さずにすまそうと、理由を探していたのです。そうとは知らない孝行息子は、約束の金ももらえず、しょんぼりと、母の待つ山の上に帰り、貧乏暮らしを続けました。
そのうわさを聞いたアブマーシーは、王様のお城で催される結婚式の日に、料理人に化けて、客に出すピラウを作っている台所にもぐりこみました。
アブマーシーは、さっそく、ジャガ芋、玉ねぎ、肉、香辛料、米、水などピラウの材料の入った鍋と、火のついた炭を、それぞれ台所の隅と隅に離して置きました。
結婚式の会場では、王様をはじめ、腹をすかせた客たちが、まだかまだかとやきもきしながらピラウが出るのを待っています。
とうとうしびれを切らした王様が、目を吊り上げて、
「なにをやっとる。ピラウはまだできんのか」
と、台所に怒鳴り込んできました。
台所では、料理人に化けたアブマーシーが、涼しげな顔でこう言いました。
「王様、すぐにピラウが炊きあがりますから、今しばらくお待ちを」
しかし、材料の入った鍋と、火のついた炭は、台所の隅と隅に離して置かれています。
「馬鹿者、鍋と火を別々のところにおいて、どうやって飯が炊けるのじゃ」
「いやあ、実は最近、例の勇気ある男に名乗りをあげた山の上の孝行息子が、一晩中海にいながら、はるか遠くの山のてっぺんで焚いていたおふくろさんの焚き火にあたって、暖をとるといういかさまをしたという理由で、王様から褒美がもらえなかったといううわさを聞いたのです。
そんなことができるなら、鍋と火を離して置いても、きっとピラウが炊けるだろうと思い、朝から試していたのですが、なぜ、まだできないのでしょうね」
王様は、アブマーシーの言葉にはっとして、思わず顔を赤らめると、こう言いました。
「ええい、わかった、わかった。山の上の若者には、すぐに褒美を取らす。もういいから、はやくピラウを炊いてくれ。ちゃんと、鍋を火の上に置いてな」
王様は、ピラウが炊きあがると、しぶしぶアブマーシーに約束の金を渡して、山の上の勇気ある孝行息子に届けさせました。
でも、もうその頃には、王様のけちぶりは、国民みんなに知れ渡っていました。
貧しい母子が一生困らないだけの金など、王様にとってはなんでもない額なのに、それをしぶるから、こんな恥をかくはめになったのです。
今日の話は、これでおしまい。
気に入ったなら持ってきな。いらなきゃ海に捨てとくれ。
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