アフリカから 黒い肌の女から生まれた白い肌の息子

[アフリカから]

黒い肌の女から生まれた白い肌の息子

島岡由美子

Shimaoka Yumiko

 ハポ ザマニザカレ(むかしむかし、あるところに)、白い肌の男がやってきて、ムニェムエジ族の女に子を産ませました。生まれた子は男の子、父親と同じ真っ白な肌の赤ん坊でした。
 男は、生まれたばかりの子を連れて、自分の国に帰ってしまいました。
 子供はすくすく育っていきましたが、物心つくと、母親に会いたくなりました。子どもが父親に「僕のお母さんはどこにいるの?」と聞くと、父親は決まって「お前のお母さんは、お前が生まれてすぐにマラリアで亡くなったのだよ」と答えていましたが、人の口に戸はたてられないもの。めぐりめぐって、実の母親が遠い国で生きていることが息子の耳に入ってしまいました。

 成人した息子は、仕事もうまくいき、結婚もし、子供も生まれて親になりました。そのころになって、どうしても自分の母親に会いたくなったので、三〇歳になったある日、使いの者をやって、母親を探して連れてくるように頼みました。
 使いの者が、三年三カ月、世界中を探し回ってたどり着いたのは、黒い肌の人たちが住む暑い国でした。使いの者は、三三年前に、白い肌の男との間に子を生した女はいないかと探しまわり、ついにムニャムエジ族の女にいきあたりました。

 ムニャムエジ族の女は、三三年も経って、自分を探し出してくれた息子に感謝しながら、遠い道のりを経て、息子の住む国に着きました。
 それなのに、息子は、黒い肌の母親が現れた途端、母を罵倒しました。
「私のように白い肌の子供を、お前のような黒い肌の女が産めるわけがない。お前なんか私の母親ではない!」
 その上、母親が黒人であることを周りに知られるのが怖くて、母親を山羊小屋に閉じ込めてしまったのです。

 黒い肌の母親は、涙にくれて山羊小屋で三三日過ごしました。この母親を不憫に思った召使がそっと逃がしてくれたので、ムニャムエジ族の女は、三三三日かかって自分の家まで辿り着きましたが、三三日も寝込んでしまいました。その後、体は元気になったものの、誰に何を聞かれても口を閉ざし、我が子の幸せを祈ることまでやめて、まったく笑わない人になってしまいました。

 一方、白い肌の息子は、ちょうどその時から、仕事も家庭もうまくいかなくなり、一気に落ちぶれ、どうしようもないほど貧しくなってしまいました。
 息子は、呪術師に相談しました。呪術師は、
「どんな事情があったって、母親は母親。人は、母からの祝福なしで幸福になることはできないのです。今すぐお母さんの元へ行って、謝ってきなさい」
 と言いました。
 白い肌を持った息子は、三三三日かかって母親の元に辿り着き、真っ黒な肌の母親に三日三晩許しを乞いました。しかし、母親は、
「私はお前の母親ではないと、お前自身が言ったのですよ。だから、私はもうあなたの母親ではありません。人には、取り返しのつかない言葉というものがあるのです」と、どうしても許してくれませんでした。

 それ以来、白い肌の息子も笑わない男になって、死ぬまで、たった一人で貧しくさびしい暮らしをしたそうです。
 今日の話は、これでおしまい。
 ほしけりゃ持ってきな。いらなきゃ海に捨てとくれ。