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ピーター・メイル

Peter Mayle 1939年、イギリス生まれ。ロンドンとニューヨークを行き来するコピーライターとして活躍。73年に出版された画期的な性教育の本『ぼくどこからきたの?』(河出書房新社)が全世界でヒット。86年、妻と愛犬とともにプロヴァンスに移住。その後書き上げた『南仏プロヴァンスの12か月』(同)は、500万部を売り上げる大ベストセラーに。近作に『ハンディ版 なにがはじまるの?』『プロヴァンスの贈りもの』(同)など多数。


坂入愛子=インタビュー、文
上田佳代子=写真


ピーター・メイル インタビュー
プロヴァンスには 毎朝の発見と感激がある

世界的大ヒットから約15年。
ふたたび物語はうごきだす


 いまからおよそ15年前、『南仏プロヴァンスの12か月』という世界的ベストセラーが生まれました。プロヴァンスに広がる美しい風景や人生を最大限に楽しむ村人たち、そしておいしい食事にかこまれた豊かな生活がゆかいに、ときにシニカルに描かれたエッセー。欧米はもちろん、日本からの来訪者が前年比で3倍にふくれあがるという、一大プロヴァンスブームを巻き起こしました。
 いまわたしたちの目のまえで初夏の空気を心から祝福しているのは、その著者であるピーター・メイルさん。カメラマンのかけ声に応じておどける姿は、6月のプロヴァンスの午後をよりいっそうあたたかなものに変化させていきます。
「リドリー・スコットとはロンドン時代からの親友で、かねてからプロヴァンスを舞台にした映画制作の話を進めてきたんです」
 プロヴァンスに別荘をもつリドリー・スコット監督とそこに暮らすピーターさん。二人が愛する大地はそこで暮らす人々の物語とともに美しい映像となり、観たものの心にじんわりと心地よく広がります。
「原作者の立場を忘れて、映画に心をうばわれました。すばらしい作品です」と、ピーターさんも大絶賛する仕上がりになりました。
 一日のなかでピーターさんがいちばん好きなのは早朝の“マジカル・モーメント”の2時間。
「毎朝6時30分に起きて、愛犬と一緒に自宅の裏山を散策します。もう長いことつづけている習慣なのに、プロヴァンスの光や風景にはいつも感激します。ノイズのまったくないその時間は、わたしのインスピレーションの源です」
 このところ世界的な異常気象の影響を受け、プロヴァンスでも嵐がつづく日があるといいます。取材中も雷の音が耳に入るのに、ピーターさんは口笛を鳴らし嵐の到来を楽しんでいるよう。「サンサンと降り注ぐ太陽の光も好きだけど、曇り空にいい風が吹くのも気持ちいいね」
とほほ笑む姿は、心からこの地のすべてを愛しているようです。
「最近よく考えるのは、人生にただよう夢と現実。夢をみることは誰にでもたくさんありますよね。以前はわたしたち夫婦も休暇でプロヴァンスを訪れるたびに、いつかここで暮らしたいねと夢を語っていました。実際に暮らしてみると思い描いていたものとは違うことがたくさんありました。それでも現実というのはすばらしいものなんです。現実というのは、未知なることを発見していくことなのですから」


この地にあわないのは
あなたではなく、あなたの人生…


 映画『プロヴァンスの贈りもの』を観て、人生について考えてしまったと感想を伝えると、「それは、あなたがまだ若いからですよ」と話しながら、やさしいまなざしをこちらに向けた。
「わたしはいま68歳。でもどんな年齢や立場、環境であっても、ひとつ共通していえることがあります。それは何かを再発見することで、自分が変われるということ。映画の主人公マックスやわたしがそうであったようにね」
 ラッセル・クロウが演じるロンドンの敏腕トレーダー、マックスにむかって、プロヴァンスに暮らすヒロインが言うせりふ。「あなたがこの地にあわないんじゃなくて、あなたの人生がこの地にあわないのよ」。そう、生来の自分と自分の人生はいつもおなじ道を歩いているとは限らないのです。
 ピーターさんがいちばん大切にしているのは、フランス語でいう「etre bien dans sa peau──自分の肌にあった自分であれ」。つまり「自分らしくあれ」ということ。 『プロヴァンスの贈りもの』の世界に足を踏み込めば、きっと誰もがもう一度考えることでしょう。自分にとっていちばん大切なものは何か、そして生きる喜びとは何か。そこには思いもしなかった再発見が待っているにちがいありません。