Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

沢尻エリカ

Erika Sawajiri 1986年、東京都生まれ。待望の主演作『クローズド・ノート』は9月29日からロードショー。また和とフランスの融合を表現することを目的に、フランスやイタリアで撮影された写真集『ERIKA2007』(SDP、2000円)が好評発売中。インタビューでは「役者と表現者のちがいを感じてほしい。これからもずっと役者であり、表現者でもありつづけたいから」と、この写真集に寄せる思いを言葉にしてくれた。
http://erika-official.com/ http://www.stardust.co.jp/erika2007


齋藤正弘(ジェイヌード)
=インタビュー、文
枦木 功=写真


沢尻エリカ インタビュー
リアル。
それがわたしの生きている証し

ほかではめったにない
お祝い事が『クローズド・ノート』の
撮影中にありました。
お祝いにわたしは自分で
クッキーを焼きました。
そういうのって大事なこと。
みんなひとつの作品をつくる
仲間なんだから。


拝啓 沢尻エリカさま
 あなたはいま、どんな空をみあげていますか? ひさしぶりの休暇は旅に出る。そう言い残して向かった先は、どこまでも空が広がる、きっと見晴らしのいい場所なのでしょう。
 その風景とはスケールや空気の乾きかたもちがうでしょうけど、『クローズド・ノート』の撮影中に行定勲監督を感動させた、あなたがブランコに乗ったあの小学校の校庭にも、気持ちのいい青空が広がっていましたね。
「どこに行っても、みられているほうがいいじゃないですか、気にされないよりも。まして相手は映画監督ですから、現場にいる間、いつも行定さんの視線は感じてましたよ。あの日はとても天気がよくて、あの小学校も見晴らしのいい高台にありました。出番までまだ時間があったし、あまりにも気持ちのいい天気だったから、ブランコに乗りたくなったんです」
 その姿を遠くでみていた行定監督は、鳥肌が立ったと言っています。主演女優がそんなふうに現場の空気をとらえることが、映画をひとつの方向に向かわせることになるのだと。あなたにとっては無意識だったかもしれない。だけど、そうした現場の一つひとつの積み重ねが、この『クローズド・ノート』の密度を高めていると思うんです。
「以前は『この役は、こうすべき』という意識が強かった。でも今回は自分のなかに香恵(沢尻さん演じる主人公)像をつくらず、『監督の求めに応えることがすべて』というスタンスで現場に入りました。これまでとは百八十度ちがうアプローチでしたけど、こういう道もあると気づけたことは、大きな発見でした」
 ほかにも今回は、ほかの役者さんの役をやってみたいという感情をはじめて味わったそうですね。でもそれは、伊勢谷友介さんが演じる男性の役でしたけど。
「生まれかわるとしたら、つぎは絶対に男。もちろん女には女の得が確実にありますよ。ニコニコしながら座っているだけで済まされることが、いっぱいあるわけだし(笑)。でもわたしはもともと男っぽい性格。だからつぎの人生では、思いっきり男らしく生きてみたい」
 そのあとにつづけて「超イケてる、超カワイイ彼女をとなりに連れて歩きたい」と言い切ったのは痛快でした。
「気持ちが動くことって、すごく大事。笑ったり、泣いたり、怒ったりすること。だから作品をとおして、だれかの気持ちを動かせたのなら、すごくうれしい」
『クローズド・ノート』の試写会で、となりの女性が何度も何度も嗚咽をもらしていたと告げたとき、あなたの表情にこの日いちばんの笑顔が浮かんでいました。
 そういえば、こんな質問にも答えてくれましたね。いつまでもこの現場をつづけたい、去りがたいと思うことはないのか……。
「カットの声がかかるまでが、わたしにとってリアルな時間なんです。『OK、カット!』が聞こえると、主演女優として現場をまとめられたという達成感はあるんです。でもその半面、誰にも制約や束縛もされない、リアルにいまを発している時間は、そこでおしまい。不思議ですよね、役者って(笑)」
 あなたの言うリアルな時間。そこにあるのは、瞬発力と集中力の忘我の時間(持久走はニガテって言ってましたもんね)。でもその一方で、いつもみられていることに自覚的で、自分と世界の距離感を、目にみえないモノサシではかっているクールな一面。そうでありながら、気持ちが動くこと、フィーリングやバイブスがあうかどうかが大事というナチュラルな感性……。インタビューというわずかな時間にも、あなたはあざやかな存在感を万華鏡のように輝かせてくれました。
 別れ際、ひさしぶりの休暇が待ち遠しいと言ってましたね。これまでの旅ではスイスの登山鉄道がよかった。いまはキプロス島に興味がある。そして「今度のバカンスには、日焼けをしたい」のだと。
 そのときは一瞬「旅先はどこですか?」と尋ねたい衝動にかられました。でもその質問をするのは、やめにしました。去りがたいほどに、深くこころに刻み込まれる思いが、つぎの機会への導火線になる。そう、それはあなたが女優でありつづける自分自身と日本映画への期待、そして愛情とおなじことですから。
 素肌がまぶしく、さらに健康的な姿になったその日に、またお会いしましょう。

敬具