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Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ
Miki Nakatani 1976年、東京都生まれ。2008年は『シルク』(フランソワ・ジラール監督)につづき、10月11日公開の『しあわせのかおり』(三原光尋監督)に出演。また09年1月にはスペシャルドラマ『白洲次郎』(NHK総合)で白洲次郎の生涯の伴侶で『かくれ里』などの著書がある白洲正子を演じる(1月10、17、24日21時から放送予定)。『papyrus』(幻冬舎)での連載、エッセー集『ないものねだり』など執筆活動でも活躍。旅行記『インド旅行記』シリーズの第4弾となる最新刊『インド旅行記4 写真編』(以上、幻冬舎文庫)が好評発売中。 http://www.roomsnakatani.com/
森 鈴香(ジェイヌード) =インタビュー、文
ミズカイ ケイコ=写真
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中谷美紀 インタビュー
星の王子さまもそういってます
円熟したすてきな女性の先輩は
たくさんいらっしゃいます。
だから30代になってかわったと
認めるのは、はずかしい。
「もう年だから」という同世代の言葉も
やっぱりはずかしいですよね。
常といふ事
無常といふ事
「こんにゃくをね、おしょうゆとお酒、しょうがで漬けこんで衣をつけて揚げるんです。鳥のから揚げみたいな食感でしょう?」
このようにしてお手製の「こんにゃくのから揚げ」のご相伴にあずかることから、この日の中谷美紀さんとのひと時ははじまりました。最新作『しあわせのかおり』で中谷さんは1人の娘をもつ未亡人でありながら、料理に深い愛情をそそぐコックを演じています。
「ポーズのとり方ってむずかしい!
ほかのみなさんとおなじじゃダメかしら(笑)?」
ご自身も写真を撮り、その腕前は自著『インド旅行記4 写真編』でも披露されているというのに、撮影のためにホリゾントに立つ中谷さん、すこし照れくさそう。
「10代のころに京都を旅したとき、骨董品屋の息子さんだというタクシーの運転手さんから教えられました。『せっかく本物が目の前にあるのに、写真にしてしまうと審美眼が鈍ってしまう。本物の美術品や建造物は写真に撮ってはいけない』と。一期一会が大事なんですよね」
そして話は物事の本質にあるウラとオモテ、常と無常へとつながっていきます。
「写真について思うのは“記憶の補完”と“無常への抵抗”。変わりゆくものを受け入れつつ、どこかで流れに杭を打ちたいということでしょうか。お仕事もそう。女優というお仕事を失ってしまったとしても、べつの生きかたはあると思うのです。でもその一方で、携わる作品には愛情を注ぎ、すべての瞬間を大切に演じたいとも思います」
そんな意識にすーっと溶けこむように染みこんできたのが、『しあわせのかおり』で共演した藤竜也さんや八千草薫さんの姿でした。
「失礼な言い方かもしれませんが、エフォートレス(無理な力をいれずに)と申し上げればいいのでしょうか。その場にいるだけで役柄そのものとして存在していらっしゃるんです。運命を受け入れていらっしゃるようにお見受けしました。わたしもいずれはその域に達したい。そう思いました」
おふたりから得た感覚を“表現しない表現”という言葉で中谷さんは説明してくれました。それは流れに逆らわず空気に逆らわず、そこにあるものと向き合うということ。
「女優は自分のカラダを媒介にして、自分ではない女性の人生を生きます。自分自身を容れものにして、カラダと声と精神で伝えるのです。それは物語のなかの女性の感情の媒介や代理であったり、観るひとの感情をつなぐかけ橋になること。料理人もおなじなのかもしれません。お料理が幸福感を運び会話をはずませたりするのは、素材に接する料理人の謙虚な気持ちが“かけ橋”になるからなんでしょうね。虚飾のない素直な気持ちでいたい、相手がひとであっても食材であっても。そんなことを考えさせてくれました」
そしていちばん大切なことを『星の王子さま』のすてきな言葉で説明してくれました。
「肝心なものは眼に見えない。星の王子さまのいうとおりだと思います。映画は視覚にうったえるところが大きいもの。だからこそ空気をだいじにつくっていきたいのです」
いいお返事の練習を
しておこうかしら
『しあわせのかおり』の撮影ですごした金沢を語りはじめた中谷さん。口調がすこしやわらかくなり、遠くを見るようなまなざしになりました。
「色彩を抑えた落ち着いた風情のある街並み。でも一歩なかに入ると意外にあざやかで派手だったりするんです。つつましやかでありながら情熱を内に秘めている、そこに日本人らしさを感じました」
5、6年ほどまえから日本のこころが気になりはじめたそうです。
「お着物を着ていることを前提とした立ち居振る舞い。あるいは三歩さがりつつ視線は三歩先を見ていたり。よろいで武装するのではなく外側はやわらかく、なかは強く。それが日本女性の美しさだと気づきました」
その日本女性のしなやかな強さを、『しあわせのかおり』をふりかえりながら、自分のなかにみつけてくれました。
「女性が男性に意見をいわなくてはいけないとき、ストレートにお伝えしてもなかなか受け入れていただけませんよね? こと映画の撮影現場ではみなさんこだわりがありますし……。そんなときに、相手との信頼関係を築いてからやわらかく意見を述べる方法を勉強中です。男性を立てつつ、さりげなくリードすることが上手な日本女性にあこがれます」
おだやかに会話を楽しむように、話をつづけてきた中谷さん。最後の言葉はたっぷりと笑みを浮かべながら、大切な秘密をそっと耳もとでささやくようにしめくくりました。
「数年前は撮影がおわるたびにさびしくなっていました。でも最近はせいせいするんです、これで自由の身になれるって(笑)。ひどいですね、薄情ですよね。でも物語の女性の人生を一つひとつこころに蓄積していては、わたしという人格が崩壊してしまいます。だから入れては出しをくりかえすことを覚えたんでしょうね。なにを撮影したのかも忘れてしまったりして……。あら! きょうは映画のお話をするはずでしたね。これでは叱られてしまいそうです(笑)」
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