Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

綾瀬はるか

Haruka Ayase 1985年、広島県生まれ。2008年は『僕の彼女はサイボーグ』(クァク・ジェヨン監督)、『ザ・マジックアワー』(三谷幸喜監督)につづき、10月25日公開の『ICHI』(曽利文彦監督)、『ハッピーフライト』(矢口史靖監督、11月15日公開)に出演。09年には『おっぱいバレー』(羽住英一郎監督)の公開がひかえている。
http://www.harukaayase.jp/

森 鈴香(ジェイヌード)
=インタビュー、文
奥村恵子=写真


綾瀬はるか インタビュー
数百回目のありがとう

市を演じているときは
とても強いヒーローになった気分でした。
ヒーローものは子どものころから好きでした。
たとえばアンパンマンとか。
ヒーローでも市とは
イメージがちがうけれど(笑)。


なんでみんな
こんなに弱いんだろう


 バラの花びらのような鮮烈な赤と黒を基調にしたバーの扉。そこから先にあるのは、綾瀬はるかさんにはちょっとオトナの世界を感じさせる空間だったみたい。
「わぁ、すてき! ねぇ、見て! あのお酒、全部飲みかけだよ!?」
 たくさんのリキュールやウオツカが並ぶカウンターをまっすぐみつめていた綾瀬さんは、驚きの発見をまっすぐな気持ちで言葉にしました。そんなふうに綾瀬さんがこころの声にすなおになれるのは、自分をゼロ地点にもどす術をみつけようとしているからかもしれません。
 たとえば最新作『ICHI』の撮影ですごした山形でのこと。
「地方ロケでホテル暮らしが長くなると、いつも知らず知らずのうちにストレスがたまってくるんです。そんなときは自分で炊いたお米を食べるといいかなって。だから山形には炊飯器をもっていったんです。そういえば共演した大沢たかおさんも、自炊がしたいからと近くの民家のはなれを借りていらっしゃいました」
 女優をはじめて8年。そこかしこで綾瀬さんらしさを表現できるようになってきました。
「いままでは私生活をあまり大事にできていませんでした。どんどん自分がなくなってきて、仕事をやめたら生きている価値もなくなっちゃう。『何のために生きているんだろう?』と考えたとき、日常をちゃんとしなきゃって気づいたんです。好きなことをしたり、友だちと会ったり。意識的に自分の時間を大切にするようになりました」
 女優という道のりをまっすぐに、ときに悩みながら歩いてきたら、みえてきたのは“わたしらしさ”。それは孤独な少女時代を生きぬいてきた『ICHI』で演じる市の姿とどこかで重なります。
「生きている実感がもてず、市はずっと“闇”のなかにいるけれど本当はやさしくて純粋な女性だと思うんです。でも環境がそうあることを許してくれなかった。その彼女がひとと出会って恋もして、すこしずつ変わっていく。本来の市の姿をもう一度みつけようとするんです」
 そして「撮影の合間に草むらでごろーんって横になれて便利でした(笑)」という着たきりの着物とボサボサのヘアスタイルもおしゃれにまとめ、必殺の逆手居合切りでひとまわりもふたまわりも大きい悪党に立ち向かいます。
「極悪な男たちを次々バサッて切ると、もうスッキリ! さやにカタナを収めながら『なんでみんな、こんなに弱いんだろう』って(笑)」
 と、孤高の女剣士の日々をふりかえり、胸をはる綾瀬さん。
 でも美しいガラスの花瓶に生けられたバラの花束を前にすると、やっぱり女の子。やさしくバラをなでていたと思ったら、突然「わっ!」。そして「えへ、とれちゃった」と頬を赤らめた。綾瀬さんの指先には、バラの花が一輪。はずかしそうにする姿は、やっぱり乙女でした。


どうしてこんなに
前向きなの?


「気持ちの切り替えができるひと。そして自分のやっていることを『好きだから』って自信をもって言えるひとにあこがれます。母がそうなんです。『きょうも一日がんばろう!
 働かせてもらってありがとうございます』がくちぐせで、毎日朝早くから床を磨いたりしてるんです。わたしが悩んでると『ヒマだからくよくよするのよ。感謝の気持ちをもって、まずカラダを動かしなさい』って」
 そしてお母さんから教わったいちばん大切にしていることをおしえてくれました。
「電車の席に座るときは、隣のひとに会釈してから座るだけでもおたがいいい気持ちになれる。人間性ってそういうささやかなことに出るんだよって母がよく言うんです。いろんな場面でその言葉を思い出します」
「ありがとう」のあふれる家で育った綾瀬さん。女優になってからの日々をつづる日記も感謝の気持ちであふれているそうです。
「2、3年前の日記を読み返してみても、あまり変わってない(笑)。日記を書くのはたいてい気持ちが前を向いてるときで、『みんなありがとう。出会えてよかった!』っていう内容ばかりなんです。だから落ちこんでいるときに読み返すと『このひと、どうしてこんなに前向きなの!?』ってつっこみたくなっちゃう。でも以前は経験が少ないぶん、怖いものしらずで突っ走っていました。それがいろんなことを知るにつれ、怖さやプレッシャーが増えてきたから、ただ“真っ白”なだけではいられなくなってきてると思います」  それでもはやく30歳になりたいと綾瀬さんは言います。
「たくさんのことを経験して、もっとひとにもやさしくできそうだし、日々の生活も大事にできるんじゃないかと思うんです。少しずつ好きなことや大事にしたいことがつづけていけたらいいな。陶芸をしたりハーブを育てたり、やりたいことがたくさんあるんです!」