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Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ
Mika Ninagawa 東京生まれ。1996年「第9回写真ひとつぼ展グランプリ」を受賞後、「キヤノン写真新世紀優秀賞」「コニカ写真奨励賞」「木村伊兵衛写真賞」「VOCA展大原美術館賞」など数々の賞を受賞。雑誌やカレンダー、書籍装丁やCDジャケットから、広告やファッションブランドとのコラボレーションなど幅広く活躍。2007年には映画『さくらん』で初監督をつとめた。
発表した写真集は50冊近くに及び、最新作は『NINAGAWA WOMAN』(講談社)。また11月1日から全国を巡回する大規模な個展『蜷川実花展 地上の花、天上の色』を開催。最初の開催地である東京オペラシティアートギャラリーは12月28日まで。
http://ninamika.com(PC)
http://ninamika-m.com(携帯)
森 鈴香(ジェイヌード) =文
枦木 功=写真
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蜷川実花 インタビュー
“闇”に飛びこみ 溶けこみたい
たとえ自分で作れないとしても、
おいしいものとマズいものは
誰でもわかると思うんです。
絶対に写真をみてくれる人を
侮ってはいけない。
「かわいい!」のひとことにも
すごくたくさんの意味が
含まれていますから。
音も光も消え
わたしが花や金魚になる
そのドアの向こうにはヴィヴィッドな天然色と、蠢くようなノワールの世界が広がっている。カラダの内側でつぎつぎと何かが起きるのを感じたら、蜷川実花さんの“企み”にまんまとはまってしまっています。
「『最初はワーッと。つぎにちょっとうっとり。そしてグッときて、最後はパッ!』。今回の作品展もこんな感じかな(笑)」
10月の末、11月から東京オペラシティアートギャラリーで開かれる『蜷川実花展 地上の花、天上の色』の作品の展示作業が大詰めを迎えていました。先週撮ったばかりだというプリントが、まだ床いっぱいに並べられています。その一角で実花さんはスタッフと作業をしていました。
今回の作品展はテーマも作品の数もニナミカ史上最大級。
「花や金魚などの被写体を撮る時は直線的に入っていきます。でも旅の場合は視界が360度開いて全身がレーダーになるんです」
撮影と日常生活は一日のなかでもまったく切り離された行為だといいます。それは撮影中の時間がとても濃く、凝縮されているから。
「“カンペキな集中力”は1時間が限界。それを超えるとすごく疲れて、集中力が手にとるように失われていく。レーダーを張り続けると日常生活が送れないのでいつもはカメラを持ち歩きません」
集中力が頂点に達したときには、自分の感覚やカラダと被写体との境界線が溶けていく感覚になるそうです。
「その感覚がおとずれると、必ず良い写真が撮れます。最近その頻度が高くなってきている気が。でも自在にコントロールは出来ないんです。いつまでもその感覚を持ち続けられればいいなあと切に願っていますが」
実花さんがピンとくるときの感覚は“ざわざわ”。雨の日の夜や怖いくらいの青空に“ざわざわ”はおとずれる。
「最近は不穏な空気が漂いはじめるとうきうきしてきます。明るい中にある闇をみかけると『なんだかヘンだ』とか『闇がたまってそう』って感じてざわざわしてくる」
何人もの
世界でいちばん
あなたが好き
実花さんは人物の撮影中、被写体とほとんど会話をしないそう。
「わたしは設定をつくるだけ。あとはみなさんが自由にやってくれるから、わたしはその素敵なところを切りとるだけなんです」
人物を作品にするための発想は、まさに実花さんの妄想から生まれます。
「お会いしたことがなくても写真を一枚みせてもらえば、その人の事がなんとなく分かる気がします。その勘はほぼハズレません。撮られるときの自意識のありかたとか、自己表現のしかたが写真から見えてくる」
それは撮る側と撮られる側の関係性からにじみでてくるもの。実花さんの場合はこんなコミュニケーションがうまれます。
「ファインダーをのぞいていると相手の方と目が合うんです。まあ、向こうからはレンズしか見えないんですが。その擬似的な『わたしのこと見てる』
ってどきどきを大切にする(笑)。『ファンのみなさん、ゴメンナサイ!』って思いながら撮ると『ゴメンナサイ♥』っていう感じの作品ができあがるんです」
撮影中は「世界であなたがいちばん好き!」と思う。
「だからポートレートの展示の部屋は少し恥ずかしいですね。過去の恋愛の集合体のような気がしなくもない。女性でも男性でも撮っている時は『あなたが一番素敵』と本当に思って撮っていますから」
そんな女子らしい“職業病”を告白してくれた実花さん。でも“男”を発揮するときもあります。
「作品展の会場構成を考えるときは、どちらかというと男性脳を使っている気がします。とにかく俯瞰の目線です。まずは文字にしてみる。このスペースでは何を見せて、どういうふうに感じてほしいか、シナリオを書くんです。そのシナリオにそって照明の明るさ、作品の数、ハデと地味、その緩急をどうすればいいか、具体に落としていきました」
映画『さくらん』での初監督の体験は、さらに“男”感覚に磨きをかけたそうです。
「女性的な映画だと言われましたけど、わたしは男性脳しか使わなかった(笑)! 自分ひとりで撮るわけではないので、普段感覚でやっている事や、内面にあるものを、すべて言語化して伝えなければならないので。女子的『だってかわいいんだもん!』スピリッツを言語化するのは苦しい訓練でした」
現場ではひたすら腰が低いと言われつづけ、「もっと偉そうにしてください」と言われた。
「でも偉いからって偉そうにしてるのって野暮ったくて最高にカッコ悪い。苦手なんです。権力はほしいんですけどね、『蜷川さんだったら撮ってほしい』『蜷川さんだったら仕方ないからお金出すよ』って思ってもらえる“権力”。“権力あるけど超いい人”を目指してます(笑)」
そして屈託のない笑顔で言う。
「ほめていただけるのは超嬉しい! こんな美術館で作品展を開けるのも、作品を高く買っていただけるのも、大勢の方が応援してくださるのもほんとうにうれしいです。感謝の気持ちを忘れないでいたいんです。言葉にするのは簡単だけど、じつはすごく難しいことなんですよね」
そして「いろんな人に観てもらえるのは、ほんとうに楽しみ! よろしくお願いします!」と深くお辞儀をして軽やかな足どりで展示作業の現場へ帰っていきました。
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