Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

妻夫木 聡

Satoshi Tsumabuki 1980年、福岡県生まれ。2008年は初舞台『キル』(野田秀樹演出)にはじまり、映画『ザ・マジックアワー』(三谷幸喜監督)、『闇の子供たち』(阪本順治監督)、オムニバス映画『TOKYO!』のうちの1話『インテリア・デザイン』(ミシェル・ゴンドリー監督)、『パコと魔法の絵本』(中島哲也監督)、『ブタがいた教室』(前田哲監督)に出演。09年は1月17日公開の『感染列島』(瀬々敬久監督)や『ノーボーイズ、ノークライ』(キム・ヨンナム監督)が待機中。また1月4日スタートの大河ドラマ『天地人』(NHK総合、日曜20時~)では主人公・直江兼続を演じる。
http://www.horipro.co.jp/hm/tsumabuki/(PC)

森 鈴香(ジェイヌード)
=インタビュー、文
奥村恵子=写真


妻夫木 聡 インタビュー
祈りはきっと届くから

どんな事態にも冷静沈着であるのが医師。
でもぼくが『感染列島』で演じたのは
情熱や弱さ、はかなさがある人間くさい医師。
観るひとが感情移入できる役になるように努めました。
それはこの作品が人間とはなにかを
問いかけているから。


たくさんの“生きる”と
出合った一年でした


「むかしからすごく運がいいんです。去年から今年にかけては、こころに宿っていた想いにぴったり重なるようなオファーがつづきました。初舞台だった『キル』や『闇の子供たち』『ブタがいた教室』、そして『感染列島』。それらの根底に流れるのは、“命”というテーマ。それこそ、ぼくが取り組みたいと思っていたことなんです」
 この一連の流れのピリオドとなるのが最新作『感染列島』。妻夫木さんは未知のウイルスに侵された患者たちと向き合う医師、松岡剛を演じている。
「この作品にあるのは“命の共存”という問題提起です。人間とウイルスは共存できないのか。ウイルスも生きてます。でも人体を蝕んでいけば、やがてはウイルス自身も身を滅ぼしてしまう。それって大きな矛盾。もしかしたら地球にとってのウイルスは人間かもしれないという気もしてきて、これからヒトはどうあるべきなのか、客観的にみつめていこうという気持ちになりました」
 そんな姿勢のあらわれなのか、それとも生来の好奇心? 仕事で出会うひとたちの生きかたも気になって仕方がないそうです。
「しょっちゅう人生について誰かに問いかけてますね(笑)。最近だと『感染列島』で共演したカンニングの竹山さん。人生って絶対マネできない、究極の個性だと思ってます。だからこそ、生きざまを聞かせてもらうことってすごく貴重なんです。少々のことではその好奇心をおさえることはできません。だって聞きたいじゃないですか!」
 つねに人生について探求しつづけている妻夫木さん。趣味のジョギング中にも考えるのをやめることはできない。
「音楽を聴きながら走ってるのに、頭のなかではいろんなことに思いをめぐらせて、ずっと考えてるんです。そのあいだは不思議と疲れを感じない。でも『あれ、疲れてないぞ?』
と意識したが最後、急につらくなる(笑)」
 ウエートコントロールのためにはじめたジョギングは、もう1年以上つづいている。
「ほんとうは目標が決まらないと、何もしないタイプなんです」と言うけれど、『どろろ』ではクランクインの1年前からジムで身体をつくったり、韓国人監督がメガホンをとった『ノーボーイズ、ノークライ』では、韓国語のマスターに励んだり。
 そうした真摯さは、出演作を決める際のスタンスにもあらわれるようです。
「監督、台本、テーマ、共演者。いろんな観点があると思うけれど、ぼくの場合、自分が感動できなければ、ひとを感動させることはできない、そう思っています」
 だから「なぜこんな救いのない作品をつくるのか」と疑問を感じた『闇の子供たち』のオファーに対しては、監督に真意を直接たずねたそうです。
「阪本順治監督からは『意味なんてないよ。この作品で世界の現状が変わるとも思わないし、変えようとも思ってない。でも映画人にできることって作品をつくりつづけること。そして作品をとおして考えたり、知ってもらう。それしかないんだよ』というこたえが返ってきました」
 この言葉がこころにストンと落ちた。
「ずっと使命感に追われ、自分自身を固めていたんでしょうね。演じていくしかないんだと気づかされました。“残さなきゃ”ではなくて“残したい”。“伝えなきゃ”じゃなくて“伝えたい”。だいじなのは演じることそのものだったんです」


やっぱりぼくは
九州男児ですから


生まれかわっても、いまの自分がいい。だからやはり俳優の道を選ぶだろうと妻夫木さんはいいます。
「絶対にまた男に生まれたい(笑)! そもそも女性にはかなわないと思っているんですけど、でもやっぱりぼくは九州男児。家族を養うのは男として当然のことと思ってます」
 それなのに、なぜか映像のなかの妻夫木さんが相対するのは、強い女性が多い。
「たしかに! どうしてだろう、Mだと思われてるのかな(笑)。でもぼくはSです、引っ張っていきたいタイプだし。自分に対してもSです!」と断言したものの、小さな声で「でも本当はどっちだろう」と周囲をうかがいます。するとスタッフから「どっちかというとM!」という声が飛び、この日何度目かの大きな笑い声につつまれました。