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Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ
Koichi Sato 1980年にドラマ人間模様『続・続事件』(NHK総合)でデビューし、翌年『青春の門』(蔵原惟繕、深作欣二監督)でスクリーンデビュー。昨年末、『ザ・マジックアワー』(三谷幸喜監督)で「2009 第32回日本アカデミー賞」優秀主演男優賞を受賞。09年は『誰も守ってくれない』(君塚良一監督)が1月24日に、『少年メリケンサック』(宮藤官九郎監督)が2月14日に公開される。
森 鈴香(ジェイヌード) =文
奥村恵子(Image)=写真
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佐藤浩市 インタビュー
ピュアホワイトの冒険の地をめざして
たとえば近所づきあいのなかにあった
気づかいのある関心やふれあい。
そんな昭和という時代には息づいていた
こころのありようが失われてしまった。
そうすると他者との関係に痛みばかりが
強調されてしまう。そんなことを
『誰も守ってくれない』でも考えました。
“心の旅”の終着点は
再生への第一歩でした
ヴィンテージブルーのデニムにまっ白なコットンシャツ。この日のスタイリングの新鮮さはご自身も感じたのでしょうか? それともそれがいつものスタイル? カメラの前に立った佐藤浩市さんは「あとはプロの方々におまかせします(笑)!」と少し照れ笑いのような表情をうかべました。
最新作『誰も守ってくれない』で佐藤さんが挑んだテーマはやはり硬派。緊迫感にみちたストーリーを描くために、君塚良一監督は手持ちカメラ2台を回しつづける「セミドキュメンタリー撮影」に徹しました。だからスクリーンいっぱいに映しだされるのは役者たちの息づかい、そして時に怒りに満ち、時に無力感におそわれる佐藤さんの瞳の表情。
「内側へ内側へと入っていきがちな重い題材をあつかいながらリアリティーとエンターテインメント性を同時に走らせる。それが君塚さんらしさですよね。ひと言で言えば“メリハリ”かな」
そんな作品だからこそ、いくつものハッとする体験も待ち受けていたようです。
「台本を読んだ印象と、実際演じて感じたことがずいぶんちがっていて、撮影が終わっても自分のなかに不確定なままの要素が多分にあった。だから作品としてどんなふうに完成するのかがわからなかったんです」
志田未来さんが演じる15歳の沙織は、殺人容疑者の妹。世間の非難や攻撃から沙織を保護するために、各地を転々とするのが佐藤さん演じる勝浦刑事。みずからが招いた事態ではまったくないというのに、ふたりの前に立ちはだかる現実はきわめて冷酷できびしい。誰も守ってくれないふたりは混乱し、追いつめられていきます。
「ぼくがこの映画でいちばん好きなところなんです」と何度もうなずきながら話してくれたのがラストシーンです。
「役者もスタッフも、涙を誘うウエットなシーンになるんじゃないかと想像していたんです。しかし、できあがったものはとてもドライだった。それがとてもよかったと思うんです。登場人物それぞれが別々のスタート地点に自分の足で立っている。この物語のエンディングは何かを解決したり見いだす“完結”ではなく、“ここからはじまる”ところにたどりつくのです」
「すごくほっとできたんだよね」と佐藤さんはくり返す。
「勝浦としてなのか、佐藤浩市としてなのかわからないけれど、もういちど自分を再生したいという思いにかられたし、そういう体験ができたような気がします」
スイッチの切り替えと
ハードルの跳びかた
出演作がつづいた最近の仕事をふりかえりながら「『ザ・マジックアワー』がいいチャンスだった」と佐藤さんは言います。
「『ん?』とひっかかるようなことがあっても『言ってみよう、このセリフ』『やってみよう、この行動』と自分に挑戦しました。もし守りの姿勢で参加していたら、とてもやりきれなかった役。越えにくいと思ったハードルを監督の三谷幸喜さんが跳ばせてくれたと思ってます」
そして苦笑いをしながら「物事に対する“乗り越えかた”をみていると、女性のほうがタフだね」と言います。
「物事を見る、信じる目線が男とはちがう。瞬発力のすごさっていうのかな。役者って役に入り込めばいいというだけではなく、自分を監視する目や“計算”することも必要なんです。でも計算を度外視したときにエモーショナルな部分が出てきたりもする。そうした状況や局面を瞬時に判断して切り替えることが求められるんだけど、そのスイッチの軽やかさは女優さんにはかないません。男にはちょっとまねできない! 実生活でも感じてますよ、生き物としてちがうんだなって(笑)」
『闇の子供たち』、そして『誰も守ってくれない』に『少年メリケンサック』など、役柄の“段差”が大きかった近作でも、佐藤さん自身、数え切れないほどのスイッチの切り替えを経験したのではないでしょうか。
「冒険している自分を見いだすことができた一年でした。ぼくが出演作を決めるのにいちばん大事にしていることは、やっぱり冒険できるかどうかということ。2番目にその作品のベクトルに共鳴できるかどうか。そして第3がおつきあいで、第4がお金かな(笑)⁉」とニヤリと笑う。
「ある意味、“自分にウソ”をつかないと全体が前に進まないという局面があります。“自分の気持ちに正直に”というだけでは通らない年齢になってきたとも言えます。その場合、“自分の気持ちにウソ”をつくのではなくて、もっとべつのハードルを自分でつくって越えていかなくてはいけないなって、この1、2年で強く思うようになったんです。台本のセリフが自分の気持ちと折り合えないとき、若いころは『こんなセリフ言えません!』って主張することが、ぼくのものづくりへの関わりかたでした」
20代のころの選択肢は“やるか、やらないか”だったとふりかえりながらつづけます。
「でもいまは『やってやろう』と思うようにする。台本を読みながら『こんなことしないよな』と思っても、じゃあひととして不自然なく成立させるにはどうしたらいいのか、まずはやってやろうじゃないかって。芝居をするうえでいちばん大事なことは、“人間である”こと。“やらない”と決めつけるのではなく、ぼくが人間としてつくりあげていこうと思うようになったんです。それがぼくのミッションなんだと」
いくつになっても、どんな経験を重ねても、あらたなハードルが待ちかまえている。それを跳べるかどうか、そしてどんなあたらしい跳びかたを身につけるか……。あざやかな飛翔者でありつづけることは、たゆまずひるまず跳びつづけてきた者にだけ贈られる栄誉なのだと佐藤浩市さんは教えてくれるのでした。
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