Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

小栗 旬

Shun Oguri 1982年、東京都生まれ。「小栗の振る舞いやちょっとしたしぐさが、ほかの人と全然ちがう。そこがいい」と小栗さん自身、自分でもよくわからないところをほめてくれるという蜷川幸雄さん演出の舞台には2003年の『ハムレット』にはじまり、3月4日に初日を迎えた『ムサシ』で6作目の出演となる。現在放送中のNHK大河ドラマ『天地人』(毎週日曜20時~、NHK総合)のほか、映画『クローズZEROII』(三池崇史監督、4月11日公開)、『TAJOMARU』(中野裕之監督、秋公開予定)が待機中。
http://www.ogurishun.net/

森 鈴香(ジェイヌード)
=インタビュー、文
柏木 功=写真


小栗 旬 インタビュー
もののふモダーン

作品に参加することで
何かが自分に還元されるとは思いません。
ただ、自分はどう参加するのか、
求められていること以上に何ができるのか?
つねにそのことを考えています。
まだまだ模索していかなければならない
過渡期にいると思っています。


かなわない。
だから立ちむかう


「いまの日本じゃ、“役者の誇り”なんて言ってるヤツほど煙たがられるんじゃないかな。わかりやすくて身近なひとのほうがいい。だからタレントのブログもこんなに流行るんじゃないかな」
 小栗旬さんは困惑したような複雑な表情を浮かべました。
「役者として本当に必要なことなのかと考えてしまうこともあります。オレはこういう“身近さ”を求めているんじゃないんじゃないか? 身近さって何なんだろう?って」
 そんな疑問を強くさせたのはイギリスでの体験。2006年、小栗さんはイギリスの観客たちを前に『タイタス・アンドロニカス』の舞台に立ちました。
「英国では観客と役者の間に絶対的な距離感が存在するんです。芝居を終えた役者たちがパブの扉を開けると、お客さんたちの拍手で迎えられる。『いいものを観せてもらったよ。お礼に一杯ごちそうさせてもらえないかな?』って声をかけられて、こちらも『オレも一杯お返しするよ』と。そして芝居の話でひとしきりもりあがって『じゃあ、また』って」
 そこにあるのは役者や芝居という文化への深い愛情。それこそが“身近さ”だと小栗さんは言います。
「日本での日常は勝手に写真を撮られたり、私生活にまで首を突っ込まれたり。芝居のことで話題になることはあまりないかな。だから文化や土壌のちがいを嘆いてもしかたない、“いま生きている小栗旬”に誇りをもとうと。ひとりの人間としての誇りですね。そして誇りをもちつづけるために、やりたいことにはなんだって挑戦します」
 自分の足で立っていく小栗さんの歩みは、役者としての責任感と使命感という重責をみずから背負っているようです。
「英国の同世代の役者と芝居の話をすると、ちゃんと自分の言葉で説明してくれる。じゃあ、いまの日本はどうなんだと問いたくなる。オレはどんな場でも自分の意志をきちんと伝えられる役者でありたい」
 話しかける相手をまっすぐ見すえて、言葉を連ねる小栗さん。その口調に熱を感じるなぁと思っていたら、一転、急に照れくさそうな表情を浮かべます。
「でも言わなくてもいいことまで、すぐ言ってしまうんです。そこがまだ子ども(笑)。いい部分も悪い部分もじょうずに伝えたい。そのためにも知らないことを、なるべく少なくしていきたいんです」
 そして“知らないこと”を獲得するのに大切なのは“言葉”だといいます。
「英語で言いたいことが伝えられれば、想いを交換したり、意見を戦わせる相手が膨大に増える。そうすれば、これまで知らなかった感覚もいっぱい手に入れることができると思うんです。言葉ってとても力がある。たとえば蜷川さんには言葉では絶対に勝てません(笑)」


ダメな自分、
恥をかく自分。
あがけるだけ
あがいてやれ


 かなわないからこそ、蜷川さんには何度でも挑みつづける。小栗さんはいま、6作目となる蜷川幸雄さん演出の『ムサシ』の舞台に立っています。
「いまのオレには演技という表現で議論をするしかないんです。だからこそもっと勉強したいと思う。いつかかならず言葉で打ち負かしたいからね(笑)」
 井上ひさしさんの脚本は「巌流島の戦い」を終えてからの宮本武蔵と佐々木小次郎の物語。
「武蔵の文献はたくさん残ってるけど、小次郎については極端に少ないんです。でも井上ひさしさん、そして『バガボンド』の井上雄彦さん、ふたりの井上さんからは『小次郎は自由にできる、遊べるぞ』と言われました。実際、調べれば調べるほど、結局だれも本当の小次郎を知らないという事実に行きつくんです。ひとによって描きかたが全然ちがうばかりか、好き勝手、言いたい放題(笑)。この舞台で第一にやるべきことは、藤原竜也の武蔵と対峙できる人物をつくることです」
 主役を張ることが続き、ひさしぶりにやってきた相手役。そしてそれが同世代の尊敬する役者、藤原さんとの競演というのが楽しみでしかたないと小栗さんは言います。
 そして「みんなでおなじ方向をめざして進んでいく舞台の快感」がいま、埼玉の劇場で解き放たれています。
「稽古中はダメな自分、恥をかく自分がいくらいてもいい。そこであがく。そして幕が開いてからも発見と後悔がずっとつづいていく。それが自分に自信をつけていくんです」