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Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ
Tadanobu Asano 1973年、神奈川県生まれ。現在公開中の『鈍獣』(細野ひで晃監督)、『eatrip』(野村友里監督)につづき、6月20日公開の『劔岳 点の記』(木村大作監督)、『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ』(根岸吉太郎監督、10月10日公開)、『スノープリンス~禁じられた恋のメロディ』(松岡錠司監督、12月公開)などが待機中。
http://www.anore.co.jp/asano/
森 鈴香(ジェイヌード) =インタビュー、文
奥村恵子(Image)=写真
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浅野忠信 インタビュー
何物にも捕らわれず こころのままに
劔岳で体験したことは
いまでもかなりひきずっています。
自分もひとを助けられるということ、
逃げ道は自分でつくっておくこと。
そしてたとえ怒られるようなことでも、
おもしろそうだと思ったら、
とことんやってみる。
いいひきずりかたでしょう?
限界を感じたら
見知らぬところへ
飛びこんでみよう
「次に登ろうとしている人生の山はインド。これが不思議でね。『劔岳 点の記』のロケで泊まった山小屋に写真集がたくさんあって、ふと手にとったのがネパールの山岳写真集。なぜかそのときはじめて『インドに行きたい』という気持ちになったんです。今までずっと敬遠していたのに」
すると周囲から「精神的な部分で呼ばれないと、インドには行けないらしいですよ」と教えられる。そんなものかと思いながら、撮影を終えて下山した浅野さんを待っていたのは「インドから仕事が来ました」というマネジャーの言葉でした。
「台本も読まずに、『行く!』と即答です(笑)。これは絶対呼ばれてる、と確信しました」
偶然はやがて必然にかわる。浅野さんは最近ことにそう感じています。それがたとえ大殺界の時期にあっても。
「ようやく今年抜けたみたいなんですけどね(笑)。大殺界のときは、これまでとちがうことをしなさいと母がいうから、じゃあいろいろチャレンジしてみるか、と。この時期に山田洋次監督や木村大作監督から声がかかったんです。そして限界を感じていたぼくに“抜け道”をつくってくれました。たと
えばこのぼそぼそとしたしゃべりかた。それが自然でリアリティーがあっていいといわれてきました。でもきっちりとした発声法で明確なセリフが必要な芝居もあると山田監督には教えられました。それはぼくがこれまで拒否してきたことでもあったんです。でもその力を身をもって確認できました」
そして木村監督から学んだのは信念。
「やりたいことに、とことんわがまま。でもそれに巻きこまれるまわりの人間にも心地いいわがままなんです。大胆にやることのおもしろさをこの3年ほどで教わりました。映画界の先輩がたは『おもしろいことをしたい』という純粋でシンプルな想いでものづくりをしている。もちろん簡単なことではないから徹底的に追求するんですけれど、根本はピュアでいいんだ、そうわかったら力が抜けて楽になれました」
むしろ自分をゆさぶる体験をくれたのは、20代の役者たちだったのかもしれないとふりかえります。
「ぼくが最年長だったある現場では、どう接したらいいのかわからず戸惑いました。彼らから発せられる異様なパワーやエネルギーに緊張して不安になり、思うようにセリフが出てこないし、自分のやりかたが通用しなければ、あたらしい方法もわからない。もしかしたらそこから模索がはじまったのかもしれません」
繊細な青年や狂気をはらんだ役が求められた20代を過ぎ、最近ではコミカルな役なども求められるようになってきました。流れに身をゆだねていると、なにが待ち受けているか予測できない。だから求めていないことも、過酷なこともやらざるをえなくなってきたそうです。
「つい最近、俳優の小沢仁志さんからおもしろいことを言われました。『思い通りにいかないことばかりでも、おまえみたいなタイプにはやらなきゃいけないことがある。それでオレたちもおもしろいことができるんだ。そういうおもしろい役者なんだから、あきらめろ!』って(笑)」
家庭を守る妻の立場に
なってみると…
たとえば幕末の壮士から戦中の困窮に耐える書生まで。さまざまな時代の激動期を作品のなかで生きてきた浅野さん。
「歴史を舞台にしていても、登場人物たちは“いま、その瞬間”に生きている。ぼくとおなじようにその時代しか知らない人生を生きているわけです。そういうスタンスでいろんな男たちを生きてみて、わかったことがあります。やっぱり男って勝手でおっちょこちょいで、どうしようもないんだなって(笑)。けれどもしかしたら、男は身勝手でドジなのがいちばんいいのかもしれない。そう思うようになってきたんです」
『劔岳 点の記』で演じた柴崎芳太郎は軍命で劔岳に向かわされます。しかし帝国陸軍のメンツなどといった精神論で、前人未踏の劔岳を踏破できるとは思えない……。
「芳太郎さんたちの足どりをたどっているうちに、気づいたことがあるんです。任務なんてちっぽけなことと思えるほど、自分たちが挑んでいるのはとてつもなく大きなこと。その状況を実は楽しんでいたんじゃないかって。芳太郎さんたちとは比べものにならないけど、ぼくたちも過酷な撮影でした。でも過酷であればあるほどおもしろさも半端じゃない。むしろ『任務だから、仕事だから』というのを口実にしているのかもしれません」
そんなふうに男のロマンを語りながら、ごくごく自然に浅野さんの口をついて出たのはこんな問いかけ。
「きっと女性からすると、いい迷惑なんでしょうね?」
その質問に、情熱をそそいで打ちこんでいる男たちの姿を女性も見ていたいと思うのではないでしょうかと答えると、ほほえんで深くうなずきます。
「ちがいを理解しあうことが、ほんとうの男女平等なんじゃないかと思うんです。腕力は男性のほうが強いかもしれない。でも包容力では女性にまったくかなわない」
女優はコミュニケーションやケアに丁寧にじっくりと時間をかけるほど、かがやきを増すと浅野さんはいいます。『劔岳 点の記』でも妻の葉津よを演じた宮﨑あおいさんとのシーンには、その持論がみごとに映しだされます。
「あおいちゃんとは2000年にカンヌ国際映画祭ではじめて会ってから、共演も重ねて、すこしずつおたがいを知ることができたと思うんです。そして木村監督はだれよりも女性の魅力を見たいと思ってますからね。その日の体調から精神面までこまやかに気づかいながら、気持ちを正直にぶつけてムードをつくっていく。そうするとあおいちゃんも自然とそうなっていくんです。女優さんですから察知する感覚もすごく敏感でしょう。まして下山したばかりの“山男たち”はギラギラしてましたからね(笑)」
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