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Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ
Ryuhei Matsuda 1983年、東京都生まれ。99年に『御法度』(大島渚監督)で俳優デビュー。2009年は、『誰も守ってくれない』(君塚良一監督)、舞台『メカロックオペラ R2C2』(宮藤官九郎演出)につづき、現在公開中の『ハゲタカ』(大友啓史監督)、『劔岳 点の記』(木村大作監督)、7月4日公開の『蟹工船』(SABU監督)がひかえている。また、NHK大河ドラマ『天地人』では伊達政宗を演じる。
http://www.ryuhei-matsuda.com/
森 鈴香(ジェイヌード) =インタビュー、文
奥村恵子(Image)=写真
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松田龍平 インタビュー
山頂を極め 海峡を渡り 挑戦はつづく
「オレがキミぐらいの年のころは……」って
話をされるのがうとましかった10代。
それが年下の役者が多い『蟹工船』では
あのころの自分を反芻する体験になりました。
彼らの考えてることをくみとる、ひとつの過程として。
そんな自分がおもしろかったし、
当時の自分とはちがうスタンスで
作品にとりくむ彼らが新鮮でした。
キーワードは
「経験したい
経験しなくては」
宮藤官九郎さん演出の舞台『R2C2』の大阪公演はまもなく千秋楽をむかえようとしていました。東京での1カ月におよぶ公演を終えた松田龍平さんを待っていたのは、威勢のいい関西のお客さんたち。
「びっくりするぐらいカーテンコールの拍手が鳴りやまないんです。『もう1回出てこいや!』と声がかかったり(笑)。なんか、うれしかったですね」
宮藤官九郎さんが所属する「大人計画」の舞台をはじめて観たときは、「自分には絶対ムリ!」と思ったのだそう。
「本当に台本があるのかと思うぐらい、舞台上でそのとき感じるままに自由に芝居をしているように見えました。自分には人前であのパワーは出せないと思いましたね。でも、やってみたら意外とできた。ムリだと思ってたのが不思議なくらい(笑)。長い期間、稽古をかさねて舞台に立つと、『あ、楽しめてるな』って」
経験してみてわかったのは、観客の反応で芝居がかわってくるということ。
「そこがおもしろくもあり、怖くもある。おなじ場面でも、昨日は大ウケしたのに、きょうは全然反応がなかったり。それはお客さんのタイプがちがうからなのか、自分の芝居がかわったからなのかと考えたりして。原因探しはあんまり楽しい作業じゃないですね(笑)」
また自己採点の点数が高かった公演の次の日に落とし穴があることを知る。
「うまくいった感覚をなぞろうとして、自由に動けなくなる。それで結果的にうまくいかなくなったり。何も考えずに自然とできたことを、意識的にもう一度やろうとするとね。そういうことができるタイプじゃないからなぁ(笑)」
「経験してみたい。経験しておかなくては」。それが龍平さんを動かす力のひとつになっています。
「『出演の決め手は?』っていう質問にこたえるのがむずかしいんです。そのときの自分に必要だな、やりたいなと思えば参加する。自分が求めるものはつねにかわってきてるんです。役者として、ものづくりをする者として、ひとりの人間として経験したいと思うかどうかが、ある意味“決め手”になってる。でも決め手がなくても、やってみたらよかったっていうケースもあるんです。すべてにいえるのは自分で決めなければいけない、ということ。自分で決めたことが、自分の求めるものになるんだと思いますね」
新作『蟹工船』で体験したくなったのは、作品にあるファンタジー性。
「現実のなかに非現実がある。SABU監督は現実の出来事として設定しているんだけど、はじめて台本を読んだときは、ぼくが演じる新庄という男の夢のなかの出来事なんじゃないかと感じることがありました。重苦しさのなかにファンタジーの要素が絶妙に溶け込んでいる。それがすごく好きなんです」
新庄は蟹工船で働く一青年。資本家たちに酷使され、生気を吸い取られ考えることをやめてしまう労働者たちに希望をよみがえらせるカリスマ的なリーダー。でもその存在にどうもリアリティーがないと龍平さんは感じたそうです。
「絶望のどん底という状況を打破させる奇抜な発想と説得力が新庄にはあるんですけど、こんなに強く生きられるヤツが、はたしてこの境遇で存在するのか? そんな違和感を払拭するために、ぼくたちとかわりない人間であることを伝えるようにしなければいけない。そうしないと『蟹工船』という作品の意味がなくなってしまう。そう意識して撮影に入りました」
おなじように新庄のセリフにもどこか共感できない。労働者たちを前に演説するとき、おなじ言葉を何度も何度も連呼する。台本を読んだときは「しつこいな」という印象があったそうです。
「でも実際に演じてみたら、もっと連呼しなくてはと思えてきた。目で追う活字と声に発する言葉とでは、根本的にちがうんですよね。新庄の呼びかけには裏付けも保証もないんです。でもやらないよりも、やったほうがいい。それが根拠になってると思うんです。できると思えばできるし、できないと思えばできない。すべてはそれに尽きるんじゃないかな。ぼくも『きっとできる』というセリフをくりかえしながら、頭で考えるのではなく、まず行動と思っていました」
蟹工船で働く労働者たちは劣悪な環境で集団生活を強いられています。当然ひとりになれる時間などありません。もしそんな生活を強いられたら……。そんなことに想像をめぐらせながら、『劔岳 点の記』の撮影での山小屋の合宿生活をふりかえりました。
「ひとりになるのがけっこう好きなんですけど、でもそういう環境だからこそ、“ここまで”ととどめていたひととの距離感を、もっと奥まで深められる時間がたっぷりとれるんです。そうするとこれまでになかった考えが自分のなかに生まれたりする。だからどんな状況でも“不自由”という考えにとらわれないでいたいですね」
ひとを知りたい。
その思いが生んだ
船中のカリスマ
そしてふたたび龍平さんのキーワードが飛び出しました。
「ちゃんと経験をしていかないと、本当の気持ちで相手にこたえられない。本心が出せるようになって、表面ではない奥の奥までつながりたいという想いが明確になりました。劔岳での生活を終えて山を降りたとき、ぼくのなかで変わりつつあったものが確かになる感覚があったんです。ひとを演じる仕事だからこそ、ひとを知りたい気持ちはやっぱりずっともっていたいと思う」
これまでの自分は「傷つきたくなかったんだと思う」と静かに言います。
「でも『傷つきたくない』と思うところがあったとしても、前にすすみたいなら自分からさらけ出さなくちゃダメなんです」
雪山で踏み出した小さな一歩は、海上を自由に進む大きな勇気になったようです。
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