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Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ
Satoshi Tsumabuki 1980年、福岡県生まれ。2009年は大河ドラマ『天地人』(NHK総合、毎週日曜20時~)で主人公・直江兼続を熱演中。また映画『ノーボーイズ,ノークライ』(キム・ヨンナム監督、8月22日公開予定)、『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』(根岸吉太郎、10月10日公開予定)が待機中。
http://www.horipro.co.jp/hm/tsumabuki/
森 鈴香(ジェイヌード) =インタビュー、文
福島典昭(CORAZON LTD.)=写真
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妻夫木 聡 インタビュー
感じるままでいいんじゃない?
こう見えて、
かなりのネクラなんです(笑)。
休日も家で考えごとしたり。
ひとりで深く重い部分を探るのは
あながち悪いことではないんです。
自分を知ることが人間を
知ることだと思うから。
もうすぐ30歳。
ますますワーカホリックに
なりそうです
気がつけば、もうすぐ30代。今年29歳になる妻夫木聡さんは気持ちがはやるそうです。
「20代にしかできないことが、もっとあるんじゃないかって探しまくってるんです。いますごく働きたいんです」
その一方で、折り返し地点をすぎた『天地人』の話になると「まだ先のことは考えたくないんです」と少し困った表情。
「これまでわき目もふらずにザーッと突き進んできたから、撮影が終わったあとの自分が想像できなくて。というか想像したくないんです。『ほかの仕事できるのかなぁ』って考えてしまうから(笑)」
直江兼続という男の人生を1年かけて生きる。そのためにはゆるぎない一本の筋をキープし、同時に成長という変化を表現しなければならない。それには自分もともに成長しなくてはならないといいます。
「でも実はすこし怖いところもあるんです。これだけ長く兼続という人間を生きていると、自分の芝居が変わってしまいそうで。何かを得るときって、同時に失うものもある。だからでてくるクセはつねに意識して、一定のラインを保つ努力をしています。無駄をどれだけ排除できるか、自分との闘いですね」
そんな闘いのうちに気づいたことがあります。
「人間って積み重ねることで、完成に近づくものだと思っていたんです。でも本当はどんどんハードルがあがっていく。悩むことは日々増えてきます(笑)」
そして「死ぬまでこうやって生きていくんだろうなぁ」とぼやいたと思えば「でも自分に納得してしまったら、そこで終わり。そうならないよう自分でハードルをあげてるのかもしれませんね。人生そのほうが楽しいからいいか!」と顔いっぱいの笑みを浮かべます。
生きるということについて、妻夫木さんは考えることをやめない。昨年から“生きること”や“命”について考えさせられる作品への出演がつづきました。そして新作『ノーボーイズ,ノークライ』もま
た、そんなテーマの映画でした。
「ぼくが演じている亨は家族を背負い、自分を犠牲にしている。そう解釈してトゲのような男を演じようかと思ったのですが、ほんとうは亨は守りたいんだと気づいたんです。背負うことが逆に生きる活力になることだってある。いいこともよくないことも、そのひとなりのバランスがとれていることがすべてなんじゃないかなって」
生きることはただでさえ楽ではない。守りたいものや欲があると、さらに立ちはだかる困難は増えてくる。でもそれはみずからの自由で選びとるものだと妻夫木さんは感じているようです。
「家族という言葉がつくられたのは、特別で大切なものだという想いがこめられていたからなんじゃないかな。でもそれはエゴだとぼくは思う。大切に思う相手からは大切に思われたい。それも欲ですよね。だれかの人生を背負う義務なんてないと思うんです。守らなきゃいけないものもない。みんなそれぞれ自分で生きているわけですから。だから守りたいかどうか、大切かどうかは自分で決めるべきものだと思うんです」
枠をとっぱらって頭のなかをもっと自由にしてもいいんじゃないか─それが『ノーボーイズ,ノークライ』でたどりついた境地。
「感じるままに、何も考えずに。人間関係の優先順位を頭で決めるから、“家族ってなんだろう?”なんて考えてしまうんです。好きだから好き、楽しいから楽しい、大切だから大切、それでいいんじゃないかな?」
役者という仕事をしていると、どうしても頭でっかちになってしまう。でもこの作品をとおして自分を解き放ち、役者としてまっさらだったころの自分が取りもどせたといいます。半年前のジェイヌードのインタビューでの「作品に参加するということは、自分自身がなにかを背負うこと」という言葉も「なんて頭でっかちだったんだろう」と昨日の自分にきっぱりとNGを出します。
そんなおおきな作用が起きたのは、以前に出演した『ジョゼと虎と魚たち』とおなじ渡辺あやさんの脚本の影響も大きかったようです。
「あやさんが書くのは、人間の裏の裏の裏の裏(笑)。好きなものを4つ挙げてと言われて、すんなり出てこない4番目のものが実はいちばん好きだったりしますよね。そういう“4番目の自分”を見つけさせてくれるんです」
ぼくはナイフで
ジョンウさんは
包丁という関係
『ノーボーイズ,ノークライ』は監督のキム・ヨンナムさん、妻夫木さんとともに主演しているハ・ジョンウさんも韓国人。セリフの多くが韓国語だったため、撮影に入る前に韓国語をマスターしました。そして渡辺あやさんファンを自称する妻夫木さんは、脚本が韓国語に翻訳される過程で微妙なニュアンスが変わっていないか、気になってしかたがなかったのだそうです。
「細かい部分を事前に一つひとつ監督に確認しました。ぼく自身も韓国語で表現をしなくちゃいけないですからね。むずかしかったのは日本語のクセがなかなか抜けないこと。日本語って語尾が下がり気味になりますよね。自信がないとフェイドアウトしたり(笑)。逆に韓国語はどちらかというと、語尾が上がるんです。元気がなくてもアニョハセヨー(笑)!」
そうして習得した韓国語を駆使した撮影現場でも、妻夫木さんの“ひとを知りたい”がいそがしく発動しました。
「ハ・ジョンウさんとはお会いしたその日から酒を飲みながら語りあいました。感性や考えかたにすごく近しいものを感じたんです。ナイフと包丁ぐらい(笑)! 外国人の役者とがっつり芝居をするのははじめて。だから自分の感受性がどんなふうに発動するのか未知の領域に踏み入る感覚で、すごく楽しみでした」
異なる言葉や文化がぶつかりあう芝居ならではのコミュニケーションのおもしろさが、きっとあると想像していた。そして実際にあったと妻夫木さんはすこし興奮気味に話してくれました。
「『この感情ぜんぜん知らないぞ!』って感覚が、何度も自分のなかから出てきたんです。でも自分ですら知らない境地に至っているぼくを共演者たちはちゃんと受けとめてくれる。その表情からスイッチの入る瞬間が感じられてうれしかったです」
言葉も文化もちがうひとたちと感情を交わらせてたどりついたのは「結局みんな人間なんだ」ということ。
「ひとつのものをつくることへの想いはおなじなんですよね。ぼくのなかでまたひとつ、世界が広がっていくのを感じました。芝居ってかぎりなく可能性があるものなんです」
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