Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

小雪

Koyuki 1976年、神奈川県生まれ。今年は『ラスト・ブラッド』(クリス・ナオン監督)にはじまり9月19日公開の『カムイ外伝』(崔洋一監督)、10月31日公開の『わたし出すわ』(森田芳光監督)、2010年には『信さん』(平山秀幸監督)が公開待機中。また山崎豊子さん原作のフジテレビ開局50周年記念ドラマ『不毛地帯』にも10月から2クール出演。04年から雑誌『Precious』(小学館)のイメージキャラクターとして、モデルとしても活躍中。
http://koyuki.jp/

森 鈴香(ジェイヌード)
=インタビュー、文
黒瀬康之=写真


小雪 インタビュー
もっと身軽にもっと速く 飛んでけ、わたし!

最近ハマってるのは、
いらないモノを捨てること。
角とか澱が落とせてゼロになれるんです。
捨てるのには思い切りがいるかもしれないけど、
わたしの場合、いまがそのタイミング。
ちょっとずつでいいからやってみてください。
こころが解放できますよ!


これが限界って
だれが決めているの?


「年齢を重ねるごとに、軽くなりませんか? 目の前のことにがむしゃらだった20代の自分も好き。だけどいろんなところにピョーンと飛べる、いまの自分はもっと好き。自分の可能性が広がってることに気づけたら、なんでもできるんじゃないかな? だからわたしは、ますます限界に挑戦するのが好きみたい(笑)」
 そんな小雪さんが「これまでの限界がぜんぜん限界じゃなかったことを知った」のが、最新出演作『カムイ外伝』で“くノ一”を演じたこと。
「わたしの辞書にアクションという言葉は存在しなかったのに!」と笑います。
「気候や環境もふくめて肉体的にも精神的にも悲惨なぐらい過酷な状況で作品づくりをしました。それだからこそ生まれたものがあるし、ほんとうの限界を知ることができました」
 撮影中は毎日トレーニングをかかさず、体脂肪率が12パーセントまで落ちてしまったそう。
「怖いんですよ、止まるのが。いったん肉体を休ませてしまうと、もう動かなくなるんじゃないかって。でも精神的にはそれぐらいでちょうどいいのかもしれない(笑)」
 学生時代はそれこそ365日、バレーボールに打ち込んでいた小雪さん。ひたすら肉体を酷使していたけれど、その意味を考えることはなかったと言います。
「人間のカラダって精神でつくられているんですね。そのことを『カムイ外伝』の経験ではじめて知りました。ひとって精神的に参ってしまうと、脳がどれだけ指令を出してもカラダが動かない。でもその瞬間にこそ『わたしは生きてる』とリアルに感じられるんです。撮影が12時間以上にもなると、肉体の限界を感知できるようカラダと対話する緊迫感がつづきます。なぜなら『今日の撮影はここまでにしたい』と伝える勇気も必要だから。自分自身の管理に責任をもつこともキャストとして、プロとして大事だと思うんです。すべては結果。結果を出さないと終われないんです」
 そのためにはどんな時間も惜しまず突きつめる。それはたとえば帰宅して玄関を開けた廊下からもはじまります。
「右受け身! 左受け身! 前受け身! 後受け身! うまくいけば壁やインテリアにふれずにリビングに到着します。これを一日に50回訓練していました。呼吸と同じぐらい、自然にできるように。カラダの動かしかたやパーツの一つひとつに意味をもたせるのって興味深いですよね」
 突きつめたのは身体表現だけにとどまるわけがありません。小雪さんが演じるスガルは、かつて自分が属していた忍びの組織から追われる抜け人。海をへだてた小さな島で身をかくすように生きているものの、猜疑心と警戒心から逃れられることは、かた時もないのです。
「スガルの芯にある孤独や悲壮感を、たたずまいとして表現しなくてはいけません。抜け人としての日常生活の中で途切れることのない緊張感や危機感をカラダに染みつけることが、まず必要だと強く感じました」
 いかにそれを徹底していたかを小雪さんはこんなエピソードを例に説明してくれました。
「次の作品を撮りはじめたら、監督から『振り返るスピードが速すぎる。もっとゆっくり』って! わたしとしてはスローモーションくらいの感覚だったのに。あのころはカラダもこころもスガルになっていたんでしょうね(笑)」


インスピレーションの
的中率は
あげることができます


 そしてなによりも、この『カムイ外伝』に惹かれ、打ち込むことになったのは、女性がしっかり描かれていたから。小雪さんの考える女性とは、複雑怪奇な生き物。だから物語のなかの女性を生きることは新しい発見であり、理解しきれていないことの確認や未知への挑戦だったり……。自分自身の可能性をさぐり、広げることなのです。
「わたしがいちばん信頼しているのはインスピレーション。もちろんはずれることだってあります(笑)。でもやると決めた仕事は結果的にすべて身になってると思ってます。多くのものにふれようとしたり、多くのことが理解できるよう努力したり。そうやって積み重ねた経験値にまさるものはないんです。でもひとつの仕事を終えて、あたらしい作品に入るときには、すべてをそぎ落としてゼロの状態にする。この作業は訓練、訓練(笑)! そして答えを自分で決めつけないこと。それはエゴにすぎないから。想像して考えつづけることでキャパシティーは広がっていきます。でもいちばんたいせつなのは愛(笑)!」
 そんなふうに考えて行動できるようになったのは28歳のときのこと。
「頭でわかっていたことが、こころでもわかるようになった瞬間がありました。それを境にブレなくなりました。わたし、落ち着いたなって。人間ってひとりで生きているようで、ひとりでは生きられない、そんな人生の小さな摂理に行き着いた気がしたんです」