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バリアフリー  2005年3月15日号

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ことばの道案内」のサイト(http://www.kotonavi.jp/)白黒反転させているのは弱視者への配慮。ここから検索サイト「ろーどへるぱー」も利用できる。
実地調査の写真

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ことナビの実地調査。写真中央が古矢さん。視覚障害者を中心とする数人1グループで、ロードカウンターという測定器を使って距離を測りながら目的地までの道のりを調査する。「正面突き当たりはコンクリートの壁」など、道順以外に注意が必要な情報も収集していく。

文・写真 中和正彦

視覚障害者が晴眼者と歩いて作る、
言葉による道案内

 目的地は、JR新宿駅の西口改札を背にして、おおよそ正面12時の方向にあります。点字ブロックは完全に敷設してあり、道案内はすべて点字ブロックに沿って説明します」
 これはNPO法人「ことばの道案内」(通称ことナビ)が作成した東京都庁への道案内の冒頭だ。ことナビは、地図が読めない人を目的地まで誘導する道案内で、サイト上で検索できるようにする活動を進めている。視覚障害者がデータ作成に参加している点が特徴だ。
 今春本格運用の検索サイト「ろーどへるぱー」の充実を図るだけでなく、将来的には、公的機関や一般企業のサイトにも、地図のページに言葉による道案内もつくというウエブ環境の実現を目指している。
 なぜこのような活動が必要なのか、都庁への実地調査に参加した全盲の女性はこう語った。
「晴眼者でも初めて行く場所は事前に地図で確認しておけば安心ですよね。視覚障害者だって同じなんですよ」
 読み上げソフトを使ってウエブから情報を得る視覚障害者が増え、画像に言葉の説明をつける配慮は広がりつつある。しかし地図に視覚障害者の頼りになる道案内がつく例はほとんどない。実際に視覚障害者が歩いてみないとわからないことが多いからである。「ことナビ」は、まさにその欠落を埋める活動だ。
 きっかけは、理事長の古矢利夫さん(56)が1999年に立ち上げた「SPAN」という視覚障害者のPC利用支援活動から生まれた。自らも中途視覚障害者である古矢さんは、外出が不便なために閉じこもりがちな視覚障害者に対して、訪問支援ではなく、あえて教室まで通わせることにした。
「障害者の社会参加と自立のためには、まず外出するようにならなければダメだと思ったからです」
 では、どうすれば外出しやすくなるか。思いついたのが、言葉による道案内だった。さっそくPC教室までの道案内を作ってSPANのサイトに載せると、視覚障害者だけでなく、地図を読むのが苦手という晴眼者からも好評だった。そこで、SPANを軌道に乗せた後の2002年11月、ことナビを立ち上げた。
「改札を背にして正面12時の方向」といった表現の規定を作り、実地調査を行いサイトに掲載すると、車いす利用者からも「助かる」という声が寄せられた。「緩やかな上り坂」「上り階段が10段」といった情報も入れたからだった。
 こうした反響を受け、ことナビは視覚障害者のためだけではない「ユニバーサルデザインの情報サービス」も目指すようになり、晴眼者の利便も考えて道案内のポイントになる場所の写真を入れたりもするようになった。
 最大の課題は、いかに道案内の件数を増やすか。今までに調査できたのは、点字図書館など東京都内の視覚障害関連施設や都庁など公的機関など約30。いまのペースでは、限られた場所への情報サービスにしかならない。しかし、古矢さんは大きな展望を持っている。
「これまでの実地調査は、全部ボランティアによる活動でした。今後は、ユニバーサルデザインの時代に必要な情報サービスであることを行政や企業に訴え、仕事として受注していきたい。データの作成と更新を担う障害者に報酬を払えれば、就労機会の提供という面からも発展していけると思います」
 そして、「われわれが実際に歩いて作る道案内は、今後のユビキタス情報社会を支える情報源の1つになりうる」とも言う。
 いま、街中に埋め込んだコンピューターが歩行者の案内をするという大がかりなシステムの研究が、産学官で進められている。ゼンリンが全国で調査員を歩かせて完成させた住宅地図がカーナビを支える情報になったように、ことナビの情報がこの歩行者案内システムを支える情報になりうるという展望である。