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バリアフリー  1月1・15日合併号

二人の写真

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「eふぉーらむ」在宅ワーカーの田中康策さん(左)を訪ねたプロジェクトリーダーの岡本悟さん。現状では各ワーカーを訪問して状況把握をする余力はほとんどなく、eラーニングをステップにして体制づくりをめざす。
ウェブサイトの写真
eふぉーらむのサイト(http://www.e-forum.jp/)。ここから在宅ワーカー登録や「eUREKA」の受講ができるようになっている。ワーカー登録は三重県内在住の障害者限定だが、eUREKAの受講は、他地域からも可能。

文・写真 中和正彦

eラーニングで在宅ワーカーを育てる
障害者就労支援組織

 三重県津市内の自宅で、ウェブ制作などの仕事に取り組む田中康策さん(27)は、自分の技能に付加価値をつけるためにeラーニングでウェブアクセシビリティーを学んでいる。
 ウェブアクセシビリティーとは、障害のある人にもウェブを利用しやすくすることで、昨年6月にその指針が日本工業規格(JIS)化され、解説書も出版されている。しかし、田中さんは、「私の場合、本のページをうまくめくれないので、教材がウェブで提供されるととても助かるんです」と明かす。  田中さんは脳性麻痺のために四肢が不自由だが、パソコンではウィンドウズの「ユーザー補助」機能を使って、標準的なキーボードとマウスでなんとか操作できるのだ。
 田中さんが利用するeラーニング・サービスは、障害者就労支援組織「eふぉーらむ」が提供する「eUREKA」(ユリイカ)。現在、「在宅ワークに役立つイロハ」からウェブアクセシビリティーなどの専門技術まで8講座が開設されている。
 eふぉーらむは、三重県の「ITを活用した障害者の自立支援策」によって2002年に設立された。障害を持つ人、企業、NPO、行政などからなる会員組織で、事務局が各方面から受注した仕事を、在宅ワーカーに登録した県内在住の障害者に提供する。ウェブの制作・管理、データベース構築、データ入力などの仕事が提供されている。
 ワーカー登録はウェブから。つまり、ウェブにアクセスして入力作業を行う技能を持っていることが登録の条件で、それ以上の技能習得は、基本的に実務を通じて行う。メーリングリストで提供される仕事の情報に対して参加の意思表示をし、事務局のサポートや品質管理を受けながら技能を磨いていく。そして、可能な限り、就職や自営などの形での自立を目指す。

登録したものの実際の
仕事に躊躇する人も

 これまでに就職を果たした人が5人おり、現在70人が在宅ワーカー登録している。田中さんも2年前に登録した。
「1年目は、独学した知識でできると思って受けた仕事がそう簡単にはいかず、苦労しました。2年目になって、やっと今の自分にできる仕事と勉強すべきことがわかるようになりました」
 だが、田中さんのように果敢に挑戦する人ばかりではない。eふぉーらむのプロジェクトリーダー、岡本悟さんはこう語る。
「登録ワーカーの3分の1ぐらいが、まだ仕事に参加していません。登録したものの、実際の仕事の情報を前にすると自信がなくて、手を挙げないのだと思います。登録すら躊躇している人もかなりいるに違いありません」
 そんななか、今年度から平日昼間に田中さんら積極的なワーカー10人を投入する大きな仕事が始まり、せっかくその他の仕事を受注しても、こなせるワーカー数に不安が出てきた。
 事務局では、常時ワーカー入門者のための講習を行ってきたが、県内は交通の便が悪い地域も多く、障害のある身で事務局まで通える人は限られている。かといって出張講習を展開する人員も予算もなく、その打開策として生まれたのがeUREKAだ。
 コンテンツは、岡本さんらスタッフがこれまでの経験をもとにしてまとめた手づくり教材。今後さらに講座数を増やしていく予定だ。
 eふぉーらむは昨年度で、県のプロジェクトとしての実施期間を終え、いま、eふぉーらむ自体の自立も求められている。岡本さんは「eラーニングを一つのステップにして在宅ワーカーを増やし、さらに熟練のワーカーが近隣への訪問支援も仕事にできるような体制づくりを目指していきたい」と語っている。