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今月のおすすめ記事 2007年11月号
私はこう読む
「ボンボン首相」かく終わりき
安倍政権自壊、福田政権誕生
今井 舞 毒舌批評家
いまい・まい 大学在学中からライターとして活躍。美容、コスメからファッション、映画、人物インタビューと幅広く執筆。著書に『女性タレント・ミシュラン』(情報センター出版局)。
私は政治に暗い。
どのくらい暗いかというと、まず政治家というものがよくわからない。毎日どんな仕事をしているのか。具体的な業務内容が想像できないだけに、昼は人と会って握手、夜は高級料亭で密談という、ステレオタイプの陳腐なイメージしか浮かんでこない。
そんな「非・政治」な人生を送ってきた私だが、とりあえず政治家として成功するのに一番重要な条件だけはわかる。「親の七光り」だ。
安倍前首相は、この件に関しては、文句なしの天才であった。七光りどころか、いろいろ合わせて合計二十一光りはある。キラキラと輝く混じりっけなしの天賦の才。それは「何で安倍なの?」のハードルを易々と超え、彼を首相の座へ押し込んだ。総裁選後、満座の拍手の中、笑顔でさわやかに会釈する安倍新総裁。あれが、彼の短くもはかない首相人生のピークだったと記憶する。輝いてたなあ。まだ何もバレてなかったからなあ。そしてこの後、生まれ以外に何の才能もないことが次々とあらわになっていくのだ。
彼の才のなさが最も表れているのは、意外に思われるかもしれないが、その佇まいである。
背が高く髪も豊か。紳士然としたルックスで、政治家としてはもちろん、首相としても文句ないレベルである。しかし問題なのは、彼に全く「政治家臭」がないことだ。政治家独特の、臭みというかエグみというか、一種のハッタリのようなものが皆無なのである。
例えば、小沢一郎や福田康夫、麻生太郎の3人。タイプは違えど、含有しているこのハッタリの質感は、3人とも同じである。とても図太く生臭い。そして、物事の本質から人の目を逸らせる力に満ちている。これは別にトップ政治家だけの特色ではなく、議員時代のアントニオ猪木や、さくらパパ、丸山弁護士といった、いわゆるタレント議員たちにも見受けられる。ある意味、政治家を政治家たらしめている重要なエキスといえる。しかしこのエキスが、安倍前首相からは全く感知できないのだ。
あのハッタリが良いとは全く思わないが、政治家なんて、ある意味それで持っているようなもの。何もないなら、せめてハッタリくらいはかましてもらわないと。誰の目から見てもあからさまに脆弱というのは考えものである。ましてや首相ならなおさらだ。
ハッタリがきかないうえ、彼にはパフォーマンス能力もない。小泉政権以来、首相にはスター的要素が必須というのに、面白発言ひとつできない。面白みがない代わりに、言っていることが真摯で誠実なのかというと、そういうわけでもない。丁寧に言葉を選んでいるように見えて、実は内容スカスカ。人に理解してもらおうという訴求が感じられない熱量ゼロの話しぶり。それより何よりまず声を張れ。でくのぼうを通り越し、生命反応すらない無機質な言動は、本当に見るべきものが何もない。
彼がついぞものまねタレントにまねされないまま終わったのも納得できる。「つまらない」の中に、何ひとつエンターテインメント性がないのだ。「生真面目」や「無味乾燥」「四角四面」といったマイナス要素を引き算して今の彼になったのではなく、元々の数値がゼロな感じ。
しかし、辞任当日のニュース特番で、どこも彼の会見をノーカットで流していなかったのを見たときは、さすがに同情した。時間にして約20分程度。流せない尺ではないのに。つまらないことをカットするのはテレビの鉄則ではあるけれど、流してやってよ最後ぐらい。高砂親方の帰国会見より少ない時間しか割いてもらってなかった。彼らしいといえば実に彼らしい、哀愁漂うエピソードである。
辞めた後、複数の議員が「放り出したことは遺憾だが、頑張ったことは理解してやってほしい」というようなことを口にしていた。「~してやって」と皆に斟酌してもらう一国の長。惨めだ。官房長官は、さらに「具合が悪いのに、それを誰にも言わずに頑張っていた」と続けていた。誰にも、と言いつつ官房長官が知っている時点でもう情けない。人の口から言わせる根性もまた女々しい。さらに官房長官は「体調不良を辞任理由にするのは、彼の美学が許さなかった」と続けたが、じゃあこんな投げ出すような辞め方が美学なのか。そして最後に、辞任の原因とされるその病状は、「目に見える異常はない」(診察医師)というレベルなのでした。「チャンチャン」って効果音入れてから入院しろ。
この人はきっと、いつもこういうふうに「皆に自分のことをいい感じに言ってもらえる」環境で今まで生活してきたんだろうな。お坊ちゃまだから。でも50を過ぎて日々是お坊ちゃま人生ってのはいかがなものか。一体どういう育ち方をしたんだ。親の顔が見たい。って知ってるけど。
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