私と昭和 最終回




 昭和33年は長嶋さんのデビューの年。昭和52年は王さんが世界のホームラン王になった年ですね。
 長嶋さんというのは特異なバッターで顔はレフトを向いているのに打球はライトに飛んで、ヒットになる。打たれた気がしないんですよ。「もっとまじめにやってくださいよ」という気がして、つい噴き出しちゃう。困ったですよ。
 王さんはぜんぜん違っていて、内野手も外野手もみんな右に寄って左はガラ空きなのに、レフトに流そうなんて全く考えない。だから、こっちもかわしてやろうなんて思いません、失礼ですから。王さんと勝負するときは「遠からん者は音に聞け。近くば寄って目にも見よ」という気分ですよ。今の言い方をすれば、ガチンコというやつですね。
 あのころ、持ち球は真っすぐとカーブと言ってましたけど、僕のカーブは曲がらなかった。王さんにはチェンジアップに見えたのかもしれないと思うと、内心忸怩たるものがありますね。
 思い返してみると、昭和のプロ野球には、王さんや長嶋さんのような英雄豪傑がいた。そういう時代を生きた者からすると、最近は選手が小ツブになったような気もします。もっとも、そんなことを言うと、「江夏も年をとったな」と言われそうですが。(談)

『週刊昭和』2号(12月2日発売)で「長嶋茂雄」を、33号で「王貞治」を特集します。