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北朝鮮外務省が、「北朝鮮の科学研究部門で今後、安全性が徹底的に保証された核実験を行うことになる」との声明を出した。 いよいよ、行き着くところまで行き着きつつあるような感じがする。 ちょっと前に、中国の外交官が「北朝鮮危機は4年周期でやってくる」と語っていたのを思い出す。 1994年の第1次核危機。 1998年のテポドン危機。 2002年のHEU危機(注1)。 そして、2006年のミサイル危機と今度の核実験(予告)危機。 声明は、北朝鮮国内でも報道された。背水の陣を敷いた形である。 核実験をしない場合は、国民が納得するそれなりの理由が立たなければならない。それだけの譲歩を米国その他から勝ち取らなければならない。 声明は次のような点を指摘している。 ▼北朝鮮はすでに核兵器製造を公式に宣言している。核兵器保有宣言は核実験を前提にしたものだ。 ▼北朝鮮は絶対に核兵器を最初に使用しない。核兵器を通じた脅しと核の移転を徹底的に許さない。 ▼北朝鮮は朝鮮半島の非核化を実現し、世界的な核軍縮と終局的な核兵器撤廃を推進するために、あらゆる努力をする。 一人前の核保有国もどきのせりふを吐いてくれるじゃないの。一方で、さまざまな疑問がわいてくる。 例えば、なぜ、「科学研究部門」などという表現を使ったのか。 北朝鮮の核は軍が仕切っていることは常識だし、6者協議の場でも北朝鮮の外交官たちは何度か、核兵器や軍事は「ある部門の人々」の所管で、自分たちの交渉権限を超える、といった点を強調したことがある。 その一方で、北朝鮮の核開発には科学研究部門の分野の開発、つまり「原子力の平和的利用」があるとし、その権利を主張してきた。 しかし、「科学研究部門」が核兵器の実験をするとなれば、北朝鮮がこれまで主張してきた「原子力の平和的利用」がまやかしの理屈だったのかとなる。 「核兵器を通じた脅しと移転」だけは認めないことを強調しているのは、テロリストに核は売らないことを宣言しているのである。 2003年4月、北京で開かれた米朝中の3者協議の際、北朝鮮外務省の李根・米州副局長(当時)が、「核移転も辞さない」と脅し、米国を激怒させたのに懲りて、それ以後、核移転だけは自らレッドラインにしてきた。それを踏襲している。 同時に、6者協議の北朝鮮代表は、核実験をしないことに対しても補償要求をほのめかしている。できるのにしないのだから、その分、補償を寄越せと。「しない」というのも「行為」なのである。今回の声明は、核実験を「しない」行為に見合う補償をさらにつり上げようというのか。 今回の核実験予告の脅しは、北朝鮮の金融犯罪(資金浄化や偽造ドル札)、さらには大量破壊兵器がらみの資金の捕捉などの締め付けに対する抗議という面を濃厚に持っているだろう。 米財務省が中心となって進めている大量破壊兵器とテロ関連の金融保安警察行動は、急ピッチである。 財務省は、国務省の情報調査局と似たようなインテリジェンス部門を設置し、北朝鮮産の偽造紙幣を追って、シンガポール、タイ、ベトナム、モンゴルと世界中にGメンを派遣している。 最近会った財務省高官の一人は「北朝鮮のフロント企業は一斉にマカオから逃走した。連中を一人残らず追っている」と述べていた。バンコ・デルタ・アジア(マカオ)の事件(注2)のことを指しているのだ。 金正日の支配体制は、このようなさまざまな活動からの上がりを軍部上層部などに配分することで維持してきたと言われる。その潤滑油が枯れはじめていると米財務省は期待する。不満を強める北朝鮮の軍部に対して、金正日としては彼らの要求するミサイル発射、さらには核実験を認めざるを得なくなったのではないか、との見方が出るゆえんである。 北朝鮮の今回の核実験予告は、核カードを2回に分けて使おうというもののようだ。 まず、予告し、それに対する各国の反応を見てから、取引できれば取引する。 次に、それができなければ、核実験を行い、核保有国となり、その立場から取引する。 もし、北朝鮮が予告だけで米国との取引に持ち込めると思ったとしたら、それは読み間違いもいいところである。ブッシュ政権がその脅しに屈して米朝2者協議のテーブルに着くことはまずない。 確かにブッシュ政権は、イラク、アフガニスタン、イラン、レバノンの混沌で身動きがとれない。中間選挙もあり内政上の立場は弱い。しかし、北朝鮮の脅しに屈して、米朝の話し合いに応じれば、国民は大ブーイングだろう。 北朝鮮は、韓国の潘基文外交通商相の国連事務総長就任に水をかけるため、このタイミングでの予告をしたのではないかとの観測もある。 国連事務総長の仕事は米国との良好な関係を維持できるかどうかにかかっている。韓国は北朝鮮の核問題で米国との関係にもっと注意しなければならなくなる。北朝鮮としてはおもしろくない状況である。その前に、核保有国として名乗りを上げておこうという計算があるかもしれない。 しかし、核実験は、盧武鉉政権にとっては壊滅的な打撃となるだろう。同政権が過去3年半続けてきた平和繁栄政策は完全に崩壊する。 核実験声明は「朝鮮半島の非核化を実現する」ことには触れているが、6者協議には何も触れていない。 中国に対する配慮のかけらもない。この声明自体、表は米国に対する抗議申し立てとなっているが、裏は中国に対する恨み節でもある。 この7月のミサイル発射の際も、中国には事前には連絡せず、事後もまともな説明がなかった。中国のメンツは丸つぶれである。 北朝鮮は、6者協議を主催してきた中国が、結局は米国と裏で組んで北朝鮮に対する圧力をかけてきたと疑っている。とりわけ資金浄化問題ではそうした感情が強い。中国金融当局は、国内の銀行に対して北朝鮮から偽造100ドル紙幣が流入しており、注意するよう呼びかけている。 6者協議はすでに1年以上開店休業の状態が続いている。2005年9月の共同声明では、北朝鮮の「すべての核兵器及び既存の核計画」を放棄することが定められた。 「すべての核兵器」の放棄は、核実験の“使用前”と“使用後”とでは、それに見合う補償も格段に違うと北朝鮮は言い張るおそれがあり、共同声明はやり直しになるかもしれない。 ただ、中国はそこまで心配する必要はないかもしれない。核実験は、6者協議をも粉砕することになるだろうからである。 注1 02年10月、訪朝したケリー米国務次官補(当時)に北朝鮮は、高濃縮ウラン(HEU)施設建設など、核開発の継続を認めた。 注2 05年9月、米財務省は国内の金融機関に資金洗浄の疑いでマカオの匯業銀行(バンコ・デルタ・アジア)との取引停止を求めると警告、同行は取り付け騒ぎに見舞われた。 |
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