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築地場内飲食店ガイド
文・安達正子



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築地市場は会社の目の前にあった。その中がどうなっているのか知りたくてたまらなくなった。今から8年前のことだ。今と違って情報が乏しく、実は朝日新聞で働き始めてからその「存在」に気づくまで、1年近くかかった。そこから手探りで通い始めた。「通」をねらって、めざしたのは「場内飲食店全店舗制覇」。お昼には閉まってしまう店も多く、達成には5年もかかった。そんな「努力」をふまえての築地案内です。 |
最初に行ったのはイタリアンの「トミーナ」。なぜかというと、私のランチタイムである1時に行っても開いている数少ないお店だったのだ。
「市場でスパゲッティ?」と思いつつ入ったが、結果的に今でも一番通う店だ。どれを食べてもおいしくハズレなし。厨房はとってもきれいだし、店の人の感じや飲み物のおかわりをくれるところなどアットホームな対応も好き。(イケメンシェフがいたけれど独立のため辞めてしまった。残念!)
ミルコーすなわち
カフェオレなり
私のランチ条件(1)わたし好みの味、メニューがある(当たり前)(2)1時過ぎでも開いていて並ばずにすむ、(3)1000円以内でおさまる、(4)接客態度よし──にぴったりあてはまる。
和食の「高はし」は私が最初に描いていた“これぞ築地”というお店で、お刺身や魚が食べた~いという時に行く。天然物にこだわり、お刺身、焼き魚、煮魚でそれぞれ固有の味を巧みに引き出している。入り口の看板に「名物のあんこう煮が今日は2200円」など、時価がきちんと表示されているのも安心。カウンターは白い三角巾のお母さんから、バンダナの三角巾をしたお姉さんに変わったが、思わずホッとする味が守られている。
働いているひとが気になって行く店もある。
洋食の「禄明軒」を仕切るカブキ顔風のお兄さん。動きがスムーズで実に見事。コの字形に20席あるカウンターの来店客を順番に把握しオーダーを聞き、料理ができあがるちょっと前にお味噌汁とライスを出し、食器を片づけ、テーブルを拭き、おつりを渡し……全てに“型”がある。 ハンバーグやエビフライ、カニクリームコロッケなどから焼きうどんまでメニューが豊富。壁には絵画が飾られ、アンティークぽい物入れが置かれ、洋食屋さんっぽい。
喫茶店は「愛養」「センリ軒」「ヤマザキ日本一」などあるが、どこのメニューにも「ミルコー」というものがある。外の喫茶店では聞いたことがないのでこれは何だろうと思ってオーダーしたところ、ミルクコーヒーの略。いわゆる“築地用語”。カフェオーレのことだった。「ミルコー」と言いたくて、お茶をする時はいつもこれを頼んでいる。
和菓子をテイクアウトできる「茂助だんご」のあんこは、薄い色そのままの上品な味で、ついおやつに買ってしまう。お店が12時半までなので、早い時間でないと、なかなか買えないのが残念。
同じ列に店を構える二大人気寿司店「大和寿司」「寿司大」は、私が通い始めた8年程前にも、もう行列ができていた。当時は11時半頃行って30分待ちぐらいだったが、今では1時間以上待ちなので、ランチタイムに行くことは無理になった。
「大和寿司」は二軒分ある。「おまかせ」にはトロ2カンを含めた合計7カンのにぎりに、巻物、卵焼き、汁物が付く。ネタもシャリも大きめで、全体に豪快な感じ。シロクマがシャケをムシャムシャ食べる感じ、といったらおわかりいただけるだろうか。
試食できるお店でも
おなかいっぱいに
それに比べて「寿司大」のおまかせは、10カンのにぎりがひとつずつ繊細な造り。巻物、卵焼きが出て、最後にお好みのにぎりを1カン選べる。あれもこれも食べたい私のためにあるようなお店と感動したものだ。
場内の寿司店の値段は、“ランチ”だと思うと高い。だけど、ここは朝から昼の街。“夜”だと思って払っている。
市場は屋号の読み方が難しいく、最初は「やまとずし?」「すしおお?」と読んでいたが「だいわずし」と「すしだい」と読む。他にも「天房─てんふさ」「米花─よねはな」「小田保─おだやす」「中栄─なかえい」など、訓読みが多いのを発見した時は“通”の仲間入りをした気分になった。
400店舗以上あるという場外はいわゆるプチ上野アメ横という感じで、私はいつも気軽に物を見たり買ったり、食べたりしている。
試食できるお店も多数あるので、とっておきの「無料でお腹いっぱいコース」を紹介する。まずはスパイラルな駐車場(NYのグッゲイハイム美術館にそっくり)の所を曲がる。そして「佃権」でさつま揚げ、次に「丸武」「大定」など卵焼き店が連なっている通りで食べ比べ。「ヤマハチ」に行ったらイカ焼、その後は明太子、佃煮、漬物をつまみ、仕上げに「うおがし銘茶」でお茶を飲んで、はい、ごちそうさま。
ブラブラ歩きながらの買い食いコースを楽しむこともある。「菅商店」でニラまんじゅうとプチ肉まんで170円、「めし丸(海宝館)」前の屋台で生ガキ100円、豆腐の「野口屋」でおからコロッケ130円、食後のデザートに「食喰」でイカ墨ソフトクリーム350円、しめて750円のランチタイム。
さて場内を食べ尽くし、場外にも足を運んでみたが、中にはマズイ店もあった。安い高い、多い少ないなどを考えながら通い、今も通う。会社という閉ざされた中から、築地市場へ足をのばすと、活気にみちた “祭り”の空間があり、屋台が立ち並ぶアジアのどこかの国を旅しているような気分になれるのが、私には楽しくて仕方がないのだ。 |
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