門田は通りと路地が重なり合ってプレイリードッグの巣のようになった現場を歩き、時計店、照明店、うどん屋、ホルモン、角打ちの店などで聞き込みを進めた。誰一人として内藤瞳のことを知っている人物に出会わなかった。
アーケードの下に入ると傘をたたみ、緑や茶、クリーム色のタイルが不規則に埋め込まれた地面を踏みしめる。ここでもシャッターを閉めている店が多いものの、通りの真ん中に設置された簡素な広告板に酒屋や靴屋の手書きのセール情報があって、門田は日々の商いの息遣いを感じるのだった。(「第三章――目的――」より)