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葛飾北斎
未発表の原画103点がついに書籍化!

⼤英博物館所蔵 未発表版下絵 葛飾北斎 万物絵本⼤全

⼤英博物館所蔵 未発表版下絵
葛飾北斎 ばんもつほんだいぜん

本について

北斎は、前例がない「世界ビジュアル⼤百科事典」に挑戦していた。だが何らかの事情で出版は中⽌され、精緻な版下絵だけが残る。

この版下絵は19世紀後半に国外に流出し、⻑い間、パリの著名な⽇本美術収集家の個⼈コレクションとして保管されていました。版下絵とは、版画にするための「原画」のことです。本来ならば版⽊に彫られた段階で消滅するはずでしたが、何らかの事情で計画が頓挫し、その結果103点は残りつづけ、180年の時を越えて、わたしたちの⽬の前に出現することとなりました。

「万物絵本⼤全」(ばんもつえほんだいぜん)とは、絵⼊百科事典のことで、北斎よりも前に『訓蒙図彙』(きんもうずい)『万物絵本⼤全調法記』(ばんもつえほんだいぜんちょうほうき)などの事典が出版されていました。これらは、⼤⼈と⼦どもが家庭学習の場で⼀緒に活⽤したり、俳諧を楽しむ⼈々が季節の花⽊を調べるのに使ったり、アマチュア絵師のためのお⼿本として使われました。今回翻訳出版される版下絵103点も、このような事典のために描かれたものです。しかし北斎がやろうとしたのは、先⼈たちが取り組んだ百科事典を単にリメイクすることではありませんでした。

54ページの書面

そもそも絵⼊百科事典が扱う伝統的な主題は、天体現象、地理、⼈物、⾐服、動物、⿂、⾍、草花など17部⾨あると⾔われています。北斎はさらに、「インド(仏教)」と「中国」を主題に選びました。仏教の諸尊、釈迦の同時代⼈や弟⼦たちの逸話(26点)、中国⽂明の祖として崇拝される神話の神々、皇帝、中国の軍事・宗教・⽂化・伝説上の重要な⼈物・俗信や習慣など(38点)を付け加えたのです。ここまでフォローしている絵⼊百科事典は、当時は存在していませんでした。

87ページの書面

本書の著者、⼤英博物館の名誉研究員であるティモシー・クラーク⽒も、『万物絵本⼤全』のための版下絵103点の再発⾒が重要視されるのは、何よりも「古代インドや中国の歴史を探求し、伝統的な絵⼊百科事典の慣例的な主題の領域を越えようとする、絵師の⼤望をも物語っているからだ」と語っています。

93ページの書面

本書には、ティモシー・クラーク⽒による、北斎の画家⼈⽣における『万物絵本⼤全』という仕事の重要性についての論考と全作品の解説が収録されています。版下絵は、⼤英博物館より提供された⾼精細のデータを使い、原⼨⼤で忠実に再現しました。さらに⽇本語版では、北斎研究者の安原明夫⽒のご協⼒をいただき、版下絵の中にある画中⽂字(本書では「詞書(ことばがき)」)の翻刻と読み下し⽂を新たに付け加えました。巻末には「神仏名に関する⽇本語・サンスクリット語の対照表」も掲載されています。

134ページの書面

2021年9⽉30⽇から2022年1⽉30⽇まで、ロンドンの⼤英博物館ではこの103点の版下絵を展⽰する「Hokusai : The Great Picture Book of Everything」という美術展が開催され、コロナ禍にもかかわらず⼤盛況のうちに終了しました。いずれこの美術展が⽇本にも巡回し、実物の版下絵103点が⾒られる⽇を待ち望むばかりです。その夢のような⽇に備え、今は本書を読んで、たっぷりと予習しておくのはいかがでしょうか。

お近くのASA(朝⽇新聞販売所)から本書をご注⽂いただきますと、⼤英博物館の⾼解像度データで作成した「原⼨⼤フルカラー・特製ポストカード」を、もれなくプレゼントします。北斎の版下絵と同じ13 センチ×18.5 センチです。

原⼨⼤フルカラー・特製ポストカード