Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

菅野美穂

1977年、埼玉県生まれ。93年にテレビドラマ『ツインズ教師』でデビュー。2007年は4月クールの『わたしたちの教科書』(CX系)につづき、10月スタートの『働きマン』(日本テレビ系)でも主役を務める。また10月26日22時からドキュメンタリー『プレミアム10 菅野美穂 インド・ヨガ 聖地への旅』(NHK総合)の放送が予定されている。現在、大鵬薬品「チオビタ・ドリンク」、花王「ソフィーナ」など多数のCMに出演中。
http://www.ken-on.co.jp/kanno/


森 鈴香(ジェイヌード)
=インタビュー、文
奥村恵子(Image)=写真


菅野美穂 インタビュー
ひらひらと。
そして
ほわっと。

誰だって3秒先に
なにが起こるかわかりませんよね?
だからシーン一つひとつの感覚を
ビビッドに表現するよう
集中してます。


待望の30歳。
最高の誕生日を
迎えられました


「つい2日前、30歳になりました。誕生日はたくさんの人たちにお祝いしていただいて、『わくわくしてきた!』という気持ちになりました。以前から30代の女性たちは私たちよりもずっと軽やかで、そして自由で楽しそうだと感じてました。なんと言うんでしょうか、“ひらひらとしている”ように見えるんです」
 30代の最初の作品に選んだのは、現在放送中のドラマ『働きマン』の主人公、28歳独身の週刊誌編集者、松方弘子。
「松方の魅力は文句も言い訳もなしにバリバリ働くけど、冷めたところがあったり、くだけたものの見方をする、そのバランス感覚です。そして仕事もオシャレも恋愛も手を抜かない。私も『どれか一つがんばっていればいいよね』とは言えない年になってきました。目標のためには、女を捨てて戦わなくちゃいけないときもある。ドラマや映画の現場には最近やっと女性スタッフが増えてきたように思いますが、やっぱり精神的な部分は男社会。だから私もどこか“男”をかぶって仕事をしている気がするんですよね。そんなこともあって松方という女性を演じられることが、すごくうれしいです。順調に年齢を重ねてこられたなあという思いと、30歳の今しかできない役をいただけたという気持ちです」
 年をとることをネガティブに感じてしまう女性も多いけれど、菅野さんは逆。
「仕事をつづけるうちに、どんどんおおらかでタフになってきていると思います。以前は何に対しても神経質でした。でも仕事は“やりたい・やりたくない”ではなく、“やる”か“やらない”か。だからこそ新しい価値観に出合えたり、自分の幅を広げることができると思うんです。こだわりがなくなって自由になっていく。その変化が、私を楽にしてくれました」
「ドラマに育ててもらった」という菅野さん。その現場にはどんな“化学変化”があるのだろう。
「出演者やスタッフは最初から団結しているわけではありません。でもいいものを作っていこうという気持ちは同じだから、しだいにまとまってくる。それも制作期間の長いドラマだからこその醍醐味です。はじめのうちはバラバラぐらいのほうが、おたがいに刺激しあえていいのかもしれません。だから出番がなくても、自然と現場に引き寄せられる(笑)。『みんなそろそろ疲れてくるころかな』って、差し入れを届けたりすることもあるんです」
 前作の『わたしたちの教科書』の制作終了パーティーでは、こんなことがあったそうだ。
「カラオケ屋で『アゲ♂アゲ♂EVERY☆騎士』を輪になって歌って踊りました。スタッフさんが衣装まで用意してくれて、盛り上がっちゃったんですよね。そして7回リピート! 気がつくと、いつの間にか年配のスタッフの方々とも円陣を組んでいました。何なんでしょうか、あの魅力は!」
「楽しいお酒ですね」と水を向けると、「イヤ、うっとうしいお酒です」と少し照れながら笑った。


いい部分に目を向ける。
文句を言うのは
簡単なことだから


「くりかえし思い出すのは『奇跡の人』を演じた日々のこと。共演した大竹しのぶさんから稽古中、『身体が信号機になっていくよ』と言われたんですけど、何のことかわからなかったんです。でも幕があがると打撲の跡が身体じゅうにできはじめて、その色が赤、青、黄色と変わっていく。『これだったのか』と。毎晩、『明日が来なければいいのに』と思いながら眠りにつく。それでもかならず朝はきます。肉体的にも精神的にも疲れ果てて、追いつめられていました。『それでも板に立てますか?』って誰かに問われているような気がして。短い爪で岩にしがみつくような気持ちで毎日舞台に立っていましたね」
 いま、いちばんの息抜きは旅だそう。
「旅での新鮮な出会いのたびに、『私、煮詰まってたんだな』とか『考え方が凝り固まりすぎてた』と気づかされる。日常では意識しても変えられなかったことが、旅をしているうちに、ほわっと変わったりするんです」
 取材中にも「飲み物、おかわりしますか?」と、周囲への気配りを忘れない。帰り際には「おつかれさまでした! ありがとうございました」と一人ひとりに声をかけてくれる。
「いい雰囲気のつくり方って、よくわからないんですよね」
 15歳のデビューから、今年30歳。でもめざしているところは、まだまだ高く、遠いところにあるようです。