Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

エレン・ペイジ

Ellen Page 1987年、カナダ生まれ。10歳のときテレビドラマでデビュー。世界中がその天才的な演技力に驚愕したきっかけは2005年のサンダンス映画祭で上映された『ハード キャンディ』(デイビッド・スレイド監督)。その後『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(ブレット・ラトナー監督)にも抜擢されハリウッドのメジャー作品へと活動の幅を広げる。08年は待望の主演作『JUNO/ジュノ』が6月14日から全国ロードショー。今後の活動については、ドリュー・バリモア初監督作品『Whip It!』、キリアン・マーフィーと共演のスリラー『Peacock』などへの出演が決まっている。


こうだ真紀
=インタビュー、文
ミズカイ ケイコ=写真


エレン・ペイジ インタビュー
泳いでごらん。
想像の外海へ

好きなことにはとことんのめりこむ。
嫌いなものにはけっこうかたくなかな(笑)。
どんなお仕事をしたいか?
あたらしいこと、チャレンジングなこと。
やっぱりそうでなくっちゃ!


照れるでも隠すでもなく
初恋のこと
愛読書のこと


「ひょっとしてハルキ・ムラカミは隠遁生活をしているのかな?」「日本ではどんなキャンプをするの?」
 インタビューを受ける側のはずなのに、エレン・ペイジさんの口からは次々と質問が飛び出す。その「ひとが好き」「相手をもっと知りたい」という姿勢が場の空気をいきいきとさせる。
「性格のある一面だけを強調するのではなく、幾重にも織りこまれた立体的な女性を演じたいです。深みのある人物だったら、演じるうえで共感できることがたくさん増えると思うから」
 最新作『JUNO/ジュノ』で演じた女子高生ジュノは1977年のパンクロックとB級映画が大好きな個性的な16歳。物語は彼女の予期せぬ妊娠で動き出す。そんなジュノのことを、小さくてもここちよく響く凛とした声でエレンはこう分析してくれた。
「ジュノは私よりずっとクール。高校生の女の子にとって突然の妊娠はすごくたいへんなことでしょ? でも彼女は自分自身で判断をして、自分ひとりでどんどん行動していく。おなかの子の父親を強く責めることもしなければ、助けも求めない。でもその強さの裏側にはおとなからなにかを問いかけられることにそなえた予防線をはり、本心を隠そうとするもろさもあるの」
 自由奔放のようでセンシティブ、まっすぐ突き進んでいくようにみえて、周囲を見渡しすぎてしまう。そんなアンビバレントなあやうさをジュノの魅力のひとつにしたのは、まぎれもなくエレン。ともするとシリアスになりがちな状況でもジュノはシニカルなユーモアで笑いを誘う。
「ふだんのわたしは進んでジョークを口にしたりはしない。いろいろなシチュエーションのなかからユーモアを探し出そうとするタイプ。そうするとものごとをシリアスに受けとめすぎずにいられるから。それにね、笑っているのが好きだし、笑いをくれるものを見たり聞いたり、笑わせてくれる人たちといっしょにいたい。人生のどんなときでも二人三脚していたいもの、それが私にとってのユーモアなの」
 ジョークではなく、ウイットとエスプリ。21歳のオスカー候補女優はすでに人生の機微を身につけているよう。
「わたしが演じたいと魅力的に感じる女性って、なぜかむずかしい状況に直面することの多いひと。ジュノも前作『ハード キャンディ』で演じたヘイリーもそうだったわ」
 ヘイリーは出会い系サイトの常習者のロリコン男を冷徹に追いつめる14歳の少女。ジュノもヘイリーも女性にしか起こりえない問題にぶつかるのだ。
「でも偶然よ、そういう役がつづいたのは。わたしの頭のなかは女と男がブレンドしているしね(笑)。どっちの要素が濃いかはそのときによってぜんぜんちがう。意識的に『きょうは女!』『きょうは男!』ってスイッチはできないですよ、もちろん!」
 そういうと、ちょうどジュノとおなじ16歳のころの初恋の話をしてくれた。
「はじめてのボーイフレンドがギターを弾いてたの。それがすごくカッコよかったから、わたしもおなじようになりたくて来る日も来る日も練習! もともと好きなものにはのめりこむタイプだからあっという間に習得しちゃった(笑)」
『JUNO/ジュノ』ではそのギターの腕前を披露してくれた。
「音楽って感動をあたえてくれるでしょ。感動をくれるものって何でも好き。文学もそうよね」
 読書好きのエレンは大の村上春樹さんファン。村上さんの話題になるとアクセルが全開になる。表紙の撮影中にも「あなたもムラカミを読む? どの作品が好き?」と質問を投げかける。
「わたしがいちばん好きなのは『海辺のカフカ』。クレイジーだけど、いったんお話のなかに入りこむとヴィヴィッドでリアルで、どんどん作品の世界に入りこんでいく。ムラカミの小説を読んでいる時間って、私にとってすごくリアルなの」
 そして“感動をあたえてくれるもの”のなかで最高峰に位置するのが“自然”。
「自然のなかにいるのがここちいいんです。キャンプが好きで、去年の8月にはカナダのノバスコシア州の島に2週間滞在したわ。行きたいところ? そうね、世界中にたくさんあって数え切れない! 夢はカナダの大自然に家を建て、自給自足の生活をすることなの」
 今回の来日では新緑が目に飛びこむながめのいい部屋ですごした。
「トウキョウって大都会なのに緑がたくさんあるのね」と満足そうににっこり。


カモメと、
少年へ還る日


「わたし、SUSHIが大好物なの! 生のお魚も大好き。なぜかというと日本のスシ・レストランには生きた魚が泳いでいる水槽があるでしょう? でもカナダやアメリカには、ああいうものってないの。ひとと食べものとの距離が遠いんです。自分たちが口にしているものが、どんな姿をしていたのか、食卓にあがる前にどんなふうだったかを知らないし、知りたいとも思っていないところがある。だからあの泳ぐ魚たちをみると、食べるものひとつとっても日本人は自然と結びついてるんじゃないかと思うんです。アメリカやカナダにもヘルシーと呼ばれている食べものはあるけれど、それとは根本的に考え方がちがっているのね。わたしが共感するのは、その考え方なのです」
 別れ際一人ひとりに「Thank you!」のひと言と握手を忘れないエレン。一瞬だけ握りしめた小さくてひんやりした手からは、強い芯を感じさせるパワーと、ふわっとしたやわらかいこころがここちよく伝わってきた。