Step ahead 日本女性としてさらに輝く先へ

岡田将生

Masaki Okada 1989年、東京都生まれ。2009、10年には『重力ピエロ』(森淳一監督)、『ホノカアボーイ』(真田敦監督)などで「日本アカデミー賞新人俳優賞」など映画賞を多数受賞。10年は『告白』『瞬 またたき』のほか『悪人』(李相日監督、秋公開予定)、『雷桜』(廣木隆一監督、10月22日公開)、11年には『プリンセス トヨトミ』(鈴木雅之監督、初夏公開予定)が待機。NTTドコモ、サントリー「ビタミンウォーター」などのCMにも出演。 http://www.stardust.co.jp/section3/

森 鈴香(ジェイヌード)=インタビュー、文
ミズカイケイコ=写真


岡田将生 インタビュー
苦しいことは楽しいこと

なぜこんなふうに思ってしまうの?
何にイラついてるんだろう?
そんなふうに思うことがあると
自分は不器用だな、と。
でも感覚は器用さじゃない。
つねに必死に五感を研ぎ澄まして
第六感で感じようとしています。


スタート地点に立って
早歩きをはじめました


 岡田将生さんは内省のひと。でも自分を省みることをエネルギーに変えられるひと。
「撮影から数カ月たって、完成した作品を観るときは、毎度反省会になります(笑)。どうしても主観的にしか観られなくて……。撮影中はすごく一生懸命で精いっぱい演じているのに、完成して観てみると反省点がたくさん見えてくる。でも、それは当時よりすこしは成長しているってことなんじゃないかなと思います」
 そしていま、役者として2度目のスタート地点にいるそう。
「1周回って戻ってきたとか一区切りついたという感覚ではないけれど、役者をはじめて5年目のいま、あらためてやっぱり自分はなにもできない、できなさすぎるなと感じるんです。だからまた一からがんばりたいという新鮮な気持ちです。いまだに芝居というものがよくわからない。でもわからないことをするのって、すごく楽しいじゃないですか。演じながら『生きてるな!』っていう感覚がこみあげてくるんです。うれしいとか苦しいとか哀しいという感情を、こんなにも強烈に感じていることが、いますごく楽しい。たくさんのひとと出会い、感情がわきおこって、芝居をするって楽しいですから! でも、じつはつらかったりして……(笑)。なにもできない自分を感じると苦しいし、相手に対してなにもしてあげられなかったときは悔しい。でも結果的には、それもふくめて『楽しいな』と思っている自分がいるんですよね」
 話をしながらも揺れ動く感情が見え隠れして、ものづくりの現場で葛藤し試行錯誤している岡田さんが、いまここにいる岡田さんに乗り移っているかのようです。楽しいばかりじゃない、でも苦しいばかりじゃない。むしろ、そのふたつはおなじことなのかもしれない。岡田さんの言葉には後ろ向きなところが何ひとつありません。
「いまはもう、バーッとまっしぐらなんです。走りはしないけれど、早歩きをしながら生きています」


37人の目が
自分を見ている怖さ


 今年公開される出演作4作品のうちの2作が、今月あいついで公開される。くしくも、どちらの作品も主人公の女性は最愛のひとを亡くし、喪失感と向き合っていく。『告白』(中島哲也監督)では松たか子さん演じる中学教師・森口悠子が担任するクラスの生徒に娘を殺害され、職を辞す。その後任の新任熱血“KY”教師が岡田さん演じるウェルテルこと寺田良輝。そして『瞬 またたき』(磯村一路監督)では北川景子さん演じる泉美の恋人で美大生の淳一役。ふたりは交通事故に遭い、淳一は命を落としてしまう。
「男のぼくから見て、泉美が過去に向き合っていく姿には女性の強さを感じました。こんなふうにして愛するひとを失ったとき、だれかをこころから頼りに思うことってなかなかできない気がする。でも泉美はひとを信じることで自分と向き合う力を得たと思うんです。森口先生は強い女性だと感じるひとは多いかもしれないけれど、ぼくの目にははかなく見えた。かわいそうでもなく、ただはかなかったんです」
「『告白』はすごくからまった作品」と岡田さんは言います。この作品について語るとき、言葉を間違えないようにと思うと表現のしかたを迷ってしまう。
「ひとによって解釈がまったくちがうんじゃないかと思うぐらいに心理描写が複雑なんです。とにかく、すごい……。そういう作品だからこそ、ウェルテルの立ち位置がつかめなくて悩みました。でも過去に重苦しい事件のあった、その空気のなかにポンと入ったウェルテルは、あまり深く考えてはいけない、ただ生徒たちとまっすぐ向き合えばいいんだということがわかってからは、そう意識して演じていました。客観的に見てしまうとウェルテルもじつははかない男ですから」
 生徒たちとの共演も、教師役がはじめてだった岡田さんを戸惑わせたそう。
「生徒たちってとにかく目の力が強いんです。教壇に立つと、うわぁって圧倒される。接しかたが難しいなと思ったり負けちゃいけないって意気込んだり不思議な体験でした。37人のつくりだす雰囲気にのまれそうになって弱っていきそうになるんです。撮影が終わって家に帰るとぐったりしていましたね(笑)。そういう体験が楽しくて! 彼らのパワーが半端じゃないんですよね。間のとりかたもつかみきれなくて、『そうやって来るか!』という驚きの連続でした。子どもたちもつねに悩んで考えて闘っていて、その姿にもすごく刺激されて、もっと引っ張ってあげたいし、自分ももっとがんばらないとヤバいぞと、これまで感じたことのないような気持ちになりました。教壇に立つとたくさんの生徒の顔と一度に向き合うんです。それにすこし怖くなったりしながらも、ぼくも彼らをまっすぐ見なきゃいけないと思えてきました」
 いい時間をすごさせていただいたんですと、すこし照れくさそうに言って、生徒たちとの年齢差があまりないことにもプレッシャーを感じていたし、中島監督はなぜ自分をウェルテルに選んだんだ?と考えつづけたことを告白。でも「そんなプレッシャーがまた楽しかったんですけどね!」と、この日数え切れないほど飛び出したハッピーワードが登場しました。  そんな“生”の力を感じた『告白』、そして『瞬 またたき』ではまたちがった“生”の力に出合いました。
「ぼくが演じた淳一の死とていねいに向き合っていく泉美を見ていると、ただただうれしい気持ちになりました。事故で失ってしまった空白の10分間の記憶。そのつらい一瞬、つまりぼくとの最期のひとときを思い出そうと必死になってくれる姿を見ていたら、生きてるってすばらしい、人間って強いんだなって」
 最初に台本を読んだとき、淳一についてあまり詳しく描かれていなかったのが気になったのだそう。淳一はどんな人物に見えるんだろう?と悩んでいきついたのが“人間っぽさ”。 「喜怒哀楽をしっかり出していきたいな、と。それってすごく人間っぽいですよね。笑って、哀しんで、怒って。そういう人間くささを表現していきたいと思いながら演じていました。それから、とてもシリアスな状況と本能的な深い愛情を表現することにリアルであろうと意識していました。でもぼくがそれを意識すること以上に、監督の演出や現場の雰囲気が作品をリアルにしているんだということもわかりました」
 現場ではとにかく吸収できるだけ吸収すると岡田さんは言います。監督や共演者、スタッフたちとのちょっとした雑談からも学ぶことがたくさんあり、先輩役者たちの演技は勉強になることや発見にあふれています。
「現場は何が起こるかわからないから好きなんです。でもクランクインまでは毎回ビビってる。怖い怖い……って。撮影中でも逃げたいなと思うことはありますよ(笑)。アガリ性なんです。だから現場で芝居するのも緊張するし、人前でなにかをするのがダメなんです。舞台あいさつなんて完全に舞い上がってしまってます」
 そんな初々しい言葉のあと、未来の話題になるとハタチとは思えない驚くべき予言を口にしました。
「先のことは想像つかないんです。なぜかというと、ぼくは結構短命だと思うから。感覚的にそんな気がしているんです。役者としてもいつまで仕事をしていられるか。厳しい世界ですから……」とうつむき加減になり声がどんどん小さくなる。すると一転、笑いながら「あと1年はもたせます!」と宣言した後、なぜかささやくように「こんなに楽しいことないですから……」。
「厳しい世界」も、やっぱり楽しいようです。