STEP AHEAD さらに輝く先へ

永山絢斗


Kento Nagayama
1989年、東京都生まれ。2007年、ドラマ『おじいさん先生』でデビュー。10年、初主演映画『ソフトボーイ』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の出演作にNHK連続テレビ小説『おひさま』(11)など。2013年1月には映画『つやのよる』の公開が控えている。

杉山雅史=写真
髙山亜紀=インタビュー、文


永山絢斗 インタビュー
“ふがいなさ”という
自分らしさ

役を演じているうちに、
自分のことも
少しずつわかってきた


『ハードロマンチッカー』のような激しく暴力的な映画にも、『マザーウォーター』のような緩やかな作品にもす~っとなじんでしまう永山絢斗さん。その一方で、『I'M FLASH!』では松田龍平さん、仲野茂さんといった濃い面々と同じ殺し屋役で並んでも、しっかりとした存在感がありました。いったいどんな男性なのでしょうか。興味津々です。
「この仕事をしてから、自分を振り返る機会が多くなりました。現場に入っている間は基本的にずっと台本を読んでいて、その役が自分に近くても、遠くても、当たり前のようにその役柄のことを考えていなければならない。そうするうちに自分のこともちょっとだけわかってくるんです。“この役はこうだけど、自分は違うな”とか。そんなふうに自分を知れば知るほど、自分のことがわからなくなってくる。いまはもう、自分のことを決めつけないようにしています」
 10代の頃は「自分はこういう人間なんだ」と決めつけなければ生きにくかったという永山さん。いまとはまるで逆だと笑います。
「やっぱり、10代ってキツかったなぁ。でも面白かった。思春期って、それまでとなんとなく変わってない感覚でいながら、でも明らかに考え方とか変わってきている。その煮え切らなさ。何をしていいのかわからなくて、学校に行くことが仕事みたいになっていた。難しかったなぁ。いまの感覚のまま、みんなで学校に行けたら楽しいでしょうけど、きっと崩壊しそうですね(笑)」
 彼が10代の頃を深く思い返したのには理由があります。映画『ふがいない僕は空を見た』で主人公の高校生、卓巳を演じたのです。


カーテンを観察したり…


「原作小説をたまたま読んでいて、まだ頭の30ページくらいしか読んでいない頃、事務所の人から『ちょっと読んでほしい台本がある』といって渡されたのがこの作品でした。なんてタイミングがいいんだと思って、“これはやるしかない。やりたい”と思う一方、恥ずかしいなという気持ちも当たり前にあって……。最終的にはこの作品をほかの人にやられたら絶対、嫌だと思ったんです」
 難しいテーマである「性」と「生」に真正面から向き合った本作。映画は人妻のあんず(田畑智子)と卓巳との衝撃的なコスプレ情事シーンで幕を開けます。
「びっくりしますよね(苦笑)。恥ずかしいという気持ちはクランクイン前も、撮影中も、いまでも続いています。公開するのが怖いですもん。“うわ、観られるんだ”って。どこかで個人的な感情が入りすぎちゃうんでしょうね。でもまあ、そんなにどうってことないですけど……」
 無防備なほど、正直な言葉で胸の内を語る永山さん。その初々しさがまだ少年のようで、ふと卓巳の姿と重なります。
「気持ちはすごいわかりました。きっとこういう思いなんだろうなというのが鮮明に見えたというか。卓巳は割と台詞が少なくて、あまり感情の起伏がはっきりと出てこない役なので、自分の中の小さな波みたいなものをうまく表現していかないとただ暗い奴みたいになってしまう。そこはすごく意識しました。現場に入っている時は、たとえば、朝、起きて、“ああ、布団があっちにいっちゃってるなぁ”と思ったり、カーテンを開けたら、カーテンの生地の感じを意識したり。天気いいなぁと思ったら、日の暖かさを感じたり、木が風に揺れてる情景に見入ったり。そんな細かなことを感情として意識したり、拾うようにしていました。そうするうち、現場でも台詞がないなかで、いろんなものに気づいていけたんだと思います」
 撮影をしている最中は、たとえプライベートでも芝居のことが頭から離れません。
「現場に入っていると、休みの日に気が抜けている時でも、やっぱり現場中というのが頭の端っこにあるから、完全な休みじゃない。一方で何も入ってない休みのほうが逆に難しくて、リラックスはできるけど“その時間に何するの、お前は?”って突きつけられているみたいで、結局、休めないんです(苦笑)」
 休日に何をするのか。たとえばライブを観に行っても、彼の場合はそれがきっかけでがっくりきてしまうこともあるのだそうです。
「ミュージシャンって自分が書いた曲をライブ会場のみんなが知っていて、しかもその曲がすごく愛されていて、歌うとドカーンという反応が返ってくる。かっこいいじゃないですか。役者ってそういうのが一切ない。結婚式でもミュージシャンは歌えば喜ばれるけど、役者が即興で芝居しても面白くないですよね? そんな時、役者っていったい、なんだろうって思っちゃうんです(笑)」
 では休みの日に映画をたくさん観るのはどうでしょうか。
「仕事ということもあり、デビューする5年前よりは確実に映画を観ています。すると、なんでこれを観ているんだろうと意味を探してしまうんです。“この映画、いいよ”ってすすめられると、とりあえず観なきゃと思う。でも、引っかかるところなんて、人それぞれ違うじゃないですか。それにかっこいいなって思わせてくれる役者さんがいたりすると、俺もちょっと、そういう芝居をやってみたいなと思ってしまう。自分としては深くいきたいのに、可能性がどんどん広がっていって、どんどん苦しくなってしまう」


喜びがあるから頑張れる


 華やかに見えた俳優の仕事。でも実際は思っていたより、断然、キツイものでした。
「当たり前にキツかったですね。もっと華やかだと思ってた(笑)。でも割と華やかな世界より、厳しい世界が好きだったので、華やかでも困るんですけど。みんなが華やかでも僕は華やかに向かって行かないタイプなので、助かりました(笑)」
 むき出しの神経のように感受性が鋭いのでしょう。ライブを観て考えて、でもまた観たくて。映画も観て考えても、でもまた観たい。彼にとっては俳優という仕事も同じ。演じている時は苦しい。でも面白くてやめられない。
「現場中は“今日はこうだったから、明日はああしよう”とか“俺、このままじゃダメだな”とかいろいろ考えて、あまり眠れないし、ただただしんどい。でも、作品を観終わって、現場が終わった後に返ってくるものがすごく多いんです。もちろん、試写を見て、自分でよかったと思うことはほとんどなく、 “ああ、ここはもっとこうすればよかった”とかダメ出しばかりしてしまいます。でも“あの作品、観たよ。よかったよ”って誰かに言われたりすると心からうれしい。たまにだけど、かすかに本当に楽しさ、喜びを感じられるときの上がり方は尋常じゃないんです。いつもがいつも、こんな調子じゃないですから(笑)」
 この作品では本当に苦しんで、文字どおりの体当たりの演技に挑戦した永山さん。また特別な喜び、楽しみが彼を待ち構えているに違いありません。