現代詩作家の著者が生活の風景、人間模様、ことば、文学などについて端正な文章で綴ったエッセイ集。発表時大きな話題をよんだ、文学には激しい力があり社会生活に実際に役に立つのだという力強い宣言(「文学は実学である」)、ある夜にふとやる気になり、設定で格闘しながらメールを開通させた喜びをユーモラスにつづったもの(「メール」)、イプセン「人形の家」のせりふを一つずつとりあげ、そのすばらしさを丁寧に論じたもの(「家を出ることば」)など、多様なテーマの全74編が並ぶ。生活の風景を描いたやわらかいことば、やさしい味わいの随筆から、文学や言葉を通じ鋭い視点からの社会批評まで、本を読むことの喜びを心から感じさせてくれる一冊。たしかめながら、著者のことばを反芻しながらゆっくりと読み、そしてまた何度でも味わいたくなる傑作随筆集! 第20回講談社エッセイ賞受賞作品。<解説・川上弘美>