人は「人生は努力して切り拓くもの」と信じている。けれど、どんなに一生懸命頑張っても、うまくいかないこともある。そうなると心は一向に軽くならず、むしろ、「もっと頑張らなければ」と自分を追い込み、さらに苦しくなってしまう。長い人生には、成功と同じく、失敗することも多々ある。「自力」の発想だけでは、つらい人生を乗り越える「知恵」として十分とは言いがたい。どうしても「自力」だけでは無理なのだ。なにかが決定的に足りていない――。そんな「なにか」を発見しようとしたのが、親鸞聖人である。「どうすれば、己は救われるのか」、あらゆる手立てを使って追求してみせた。それが後の悟り――「他力」の発見へと繋がっていく。多くの人は、「扉」を開けるために、最短コースを選択しがちだ。でも、失敗し、道を変えざるを得なかったからこそ、見えてくるものがある。挫折の連続のように見えても、そうした人生の道草でしか気づくことができないことがある。それこそが、「他力」から与えられた「人生の意味」なのだ。そんないかんともしがたい力の作用に気づくことで、心の荷物が下ろせ、回り道のように思えた経験が生きてくる。そんな人生がラクになる親鸞の教えを、著者がわかりやすく説く。