57歳の若さで帰らぬ人となった十八代目中村勘三郎。歌舞伎人として彼は二つの面を持つ。一つは梨園屈指の名門に生まれて芸事に邁進し、後ろ盾たる父を早くに失うハンデを乗り越え、圧倒的な数のファンを掴んだこと。もう一つはその環境に安住せず、歌舞伎人気向上のため自ら裏方として考え、動き、様々な会場での歌舞伎公演や若手脚本家の招聘など新しい試みを次々と実現させ、新しい歌舞伎ファンを誕生させたこと。その両面を持つ勘三郎は、歌舞伎ファン誰しもにとって唯一無二の特別なスターであった。彼が周りの人をも巻き込みながら何を成したのか、朝日新聞を中心とした膨大な資料を基に、客観的視座から記録する。十八代目勘三郎評伝の決定版。