<二十世紀の半ばまでオランダ人は、海でしごとをしてきた。><海ときりはなしてオランダ史もオランダ人も成立しなかった。>と書く司馬さんは、空路、アムステルダム入りした後、オランダの町を歩きながら、その国土や貿易の歴史について考える。ライデンではシーボルトが日本から持ち帰ったトチの木を眺めながら、<決死の大航海>で日本にたどり着いた1隻のオランダ帆船から始まった日蘭交流のことを思う。港町ホールンでは、オランダが貿易立国となるきっかけになったニシン漁について考える。そして、<「ネザーランダー(低い土地のひとびと)」>と呼ばれながら、低地を干拓することによって国土を造ってきたオランダの国民性に思いをはせ、アイセル湖と北海を仕切る大堤防へと足をのばす。
このあと、司馬さんは、ゴッホの故郷でもあるニューネンを訪ね、マーストリヒトやアーヘンを経てベルギーのアントワープに入る。プッテで再びオランダに入国した司馬さんは、フラウエン・ポルダー、ヘルフットスライス、ロッテルダムをまわってアムステルダムに戻る。