共立女子大講堂付近の交差点に立った司馬遼太郎は、一帯を見回しながら、江戸期から幕末にかけての護持院ヶ原に思いをはせる。想像は、関東入国当時の徳川家康の城下町造成工事から、福沢諭吉の逸話や森鴎外の小説へと飛ぶ。やがて、旅は<世界でも有数な物学びのまち>を作った歴史を辿り始める。神田於玉ヶ池跡で、北辰一刀流の千葉周作に触れ、湯島聖堂で江戸の学問を考える。ニコライ堂、神田明神に立ち寄りながら、神保町の古書店街に足を踏み入れた司馬さんは、出版社や本屋の巨人たちを次々に思い起こし、最後は、明治期の私学の勃興と、そこで学んだ人びとの志に思いをいたす。