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司馬遼太郎の本

『木曜島の夜会』の取材でオーストラリアへ(1976年4月、撮影・野村宏治)

街道をついてゆく
珍しくTシャツ姿の司馬さん。
木曜島周辺の海を漁船で走った
(撮影・野村宏治)

 懐かしく、いまも新しい司馬遼太郎の世界を再訪する、週刊朝日MOOK「週刊司馬遼太郎IV」が4日に発売になります。週刊朝日に現在も連載中の企画で、読者の皆さんのご支持をいただき、MOOKはこれで4冊目。今回はまず、高田屋嘉兵衛の生涯を描いた『菜の花の沖』がメインになります。

 菜の花が咲くふるさと淡路から取材をはじめ、嘉兵衛がその礎を築いた函館を訪ねたところ、先祖同様に味のある子孫に会うことができました。さらにロシア・カムチャツカも取材しました。嘉兵衛が幽閉された地で、ここまでは司馬さんも取材にはきていません。カムチャツカには美しい火山がいくつもそびえていました。嘉兵衛はどんな思いで、これらの火山をみていたでしょうか。

 戦国時代の先駆者、北条早雲が主人公の『箱根の坂』、千葉周作の『北斗の人』、さらには『新選組血風録』『真説宮本武蔵』『アメリカの剣客』といった短編の世界も取材しています。司馬さんはかつて、担当編集者にいいました。
 「短編小説を書くのはエネルギーがいるんだ。若いときじゃないとできないね」
 長編とは、ひと味もふた味も違う短編の世界にご案内します。

 グラビアのテーマは『木曜島の夜会』です。オーストラリアのトレス海峡にうかぶ木曜島には、日本人ダイバーの歴史があります。司馬さんが訪れた島を32年ぶりに「再訪」しました。日本人ダイバーの子孫たちはたくましく木曜島に根を下ろしていました。

 連載中はモノクロですが、MOOKはオールカラーです。安野光雅さんの絵と、小林修カメラマンの写真で、さらに司馬さんの世界が楽しめます。津本陽、夢枕獏、シブサワ・コウ、浅野妙子ら各氏のインタビューには、司馬さんへの思いが深くこめられています。司馬さんの引き出しはまだまだ豊富で、取材をしながら、そういうことだったのかと、気づかされます。司馬ワールドを存分にお楽しみください。

週刊朝日・村井重俊

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