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バリアフリー 2005年6月1日号
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PDAには音声案内と同時に大きな文字でテキストが表示される。弱視の人などへの配慮だ。直射日光の真下でなければ、視認性はかなり高い。
文・写真 佐橋慶信
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視覚障害者自身で作った 臨場感ある京都の街の音声道案内
「香ばしい八つ橋の焼けたにおい」「足元が滑りやすい石畳に変わる」などの音声案内が、PDAから聞こえてくる。
2004年11月20日に京都で行われた音声案内「音のお出かけ地図」の実証実験風景だ。視覚障害者が街の様子を実感できるような案内で、散策をより楽しいものにしてくれる。
そんなガイドを視覚障害者に提供しようとしているのは、日本サスティナブル・コミュニティ・センター(以下SCCJ、京都市)と視覚障害者の福祉施設「京都ライトハウス」。
SCCJは障害者や高齢者とインターネットとを結び、より活用してもらうことを目的とするNPO法人で、市民の手で公衆無線インターネット網をつくる「みあこネット」プロジェクトの事業主体だったことでも知られている。
実証実験で使われたPDAには「ユビキタス・ラジオ」というアプリケーションがインストールしてある。これはSCCJが開発支援し、ネットイン京都が事業化したもので、PDAでの音声読み上げを可能にするエンジンだ。ちなみにユビキタス・ラジオは、様々なウエブサイトの音声読み上げにも対応している。
音のお出かけ地図はこのユビキタス・ラジオ用のコンテンツとして配布され、実証実験中はユビキタス・ラジオのホームページ(http://www.u-radio.jp/)からダウンロードできるようになっていた。ICタグやGPSと連動しているわけではなく、手動で再生する音声の道案内にすぎないが、将来的には街中にある公衆無線LANのアクセスポイントからサイトに接続し、随時地図をダウンロードして、視覚障害者の京都市内の散策に役立ててもらおうというのがSCCJの考えだ。
視覚障害者自身が作った
よりイメージしやすい道案内
現在開発されている音声データは、産寧坂から清水寺までの一部のルート。
「清水寺までは借りられるトイレはないのでここで借りておく」「京都にしかない抹茶プリンの試食」など、視覚障害者にもイメージしやすい具体的な内容になっている。
地図の製作を担う中心人物が、京都ライトハウスの授産施設FSトモニー職員の山口要さん(57)。京都市在住の山口さんは視覚障害者だが、清水寺周辺を奥さんと何度も歩き、地図が不要なほど周辺については熟知している。
さらに、作られた地図は京都ライトハウスの視覚障害者スタッフが何度か足を運んで位置や名前などを検証しているため、より信頼性の高いものになっている。だが、まだまだ課題はある。
たとえば、現在の案内は産寧坂から清水寺までの一方通行で、帰りの道についてのナビゲーションが用意されていないなど、まだデータが不十分だ。
また今回の実証実験終了後の参加者ミーティングでは、基本操作について参加者の不満の声も上がった。
「周囲の雑踏の中で耳を澄ましても聞き取れない場合があるので、音量調整をもっと楽にしてほしい」「一度情報を見失うと、取り戻すのが大変で最後まで流して聞いてしまうので、ポーズ(一時停止)機能を充実させてほしい」など、読み上げソフトの操作性の向上を求める内容だ。操作の基本に関する意見だけに、SCCJでも重要視している。
ほかにもICタグや無線LANとの合理的な連係により、正確な位置情報を把握できるようにするなどの技術的な課題もある。
しかし、今回の実験を通じて、視覚障害者が自らの手で街の地図を音声化し、その地図によって障害者自身が気軽に京都の名所旧跡などを散策できる下地ができあがったことは、こうしたプロジェクトにとっても前進といえるだろう。
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