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バリアフリー 2005年7月15日号
写真を拡大 NTTクラルティは、障害者雇用促進法で本来、親会社が雇用すべき人数の障害者を代わって一括して雇用することが認められた特例子会社。今後さらに40人の障害者雇用が計画されており、オフィススペースも確保されている。
写真を拡大 スクリーンリーダーの読み上げをイヤホンで聞きながら「ゆうゆうゆう」の仕事を進める小高さん(右)。サイトのネーミングには、「だれにでも(Universal)使いやすく(Usability)、優しい(優しいのゆう)サイトにしたい」という意味が込められている。
文・写真 中和正彦
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ポータルサイト運営からアクセシビリティーの専門家へ障害を持つ社員たちの挑戦
「障害者による障害者のためのポータルサイト」を実践する「ゆうゆうゆう」というサイト(http://www.u-x3.jp/)が、4月に開設された。各界で活躍する障害者へのインタビューなどの読み物のほか、テーマ別の情報リンクや掲示板が見やすく整理されている。
運営するのはNTTクラルティ。このサイトの開設によって事業をスタートさせたNTTの子会社で、全社員28人のうち20人を、障害を持つ人から新規採用した。
「最初は隣の席の聴覚障害の方と、全然コミュニケーションが取れなくて困りました」と苦笑する小高公聡チーフディレクター(40)は目が見えない。3年前まで政府系金融機関に勤めていたが、眼病と薬の副作用などが重なって失明したうえに、人工透析が必要な体になり離職。その後、ウェブを障害のある人にも利用可能にすること(ウェブアクセシビリティー)について、自分の情報生活にかかわる切実な問題と感じて、独学を積んだ。「この会社の求人を見たときは、自分にピッタリの仕事だと思った」という。
一方、ウェブ制作について、「どうしても見た目優先で考えてしまって、あとで視覚障害の方が使う読み上げソフトが上手に読まないことに気づかされます。視覚的なおもしろさと実用面を、どう両立させるかには悩みますね」と語るのは、車いすを使う山田純也ディレクター(33)。
これまで仕事でDTPやホームページ制作の技能を磨いてきたが、異なる障害を持つ人と一緒に、それぞれの障害に配慮した仕事をするのは初めて。現在、そのノウハウ習得に励んでいる。
コミュニケーションの壁を
IT技術で乗り越える
社員は障害も技能も人それぞれのため、業務はチームを組んで進めている。そのために必要なコミュニケーションと情報共有に、ITが大きな役割を果たす。
LANで結ばれた各人のパソコンは、「IPメッセンジャー」で文字による会話ができるようにしてあり、視覚障害者のマシンには業務用のスクリーンリーダー「JAWS」がインストールされている。これで、見えない小高さんと聞こえない隣の社員のコミュニケーションも、スムーズに行えるようになった。
「バリアを感じず、本当に普通に言葉を交わせるようになりました。『ねえ、ハイチュウ、食べる?』とか(笑)」
また、グループウエアの「サイボウズ・オフィス6」で連絡事項や会議録などを共有。会議にはパソコンを2台用意し、1台はタイピングの速い社員が各人の発言をリアルタイムで打ち込んで聴覚障害のある社員に伝え、もう1台は明瞭に話せない聴覚障害の社員が自分の発言を文字にして伝える。
「この方法を導入してから、それまで遠慮がちだった聴覚障害の社員も、積極的に発言するようになりました」と喜ぶのは丸山直樹社長。ゆうゆうゆうはまだコンテンツが少なく内容もきまじめだが、「どういう内容が足りないか、好き放題言いあって、その中から一つずつ実現していってほしい」という。給与は目標へのチャレンジを高く評価し、逆にこの点で評価が悪いと給与が下がるそうだ。
その給与のための収益はどう稼ぎ出すのか。一番の柱はウェブアクセシビリティーに関するコンサルティングだ。
ゆうゆうゆうを、昨年制定されたウェブアクセシビリティーに関するJIS(日本工業規格)に準拠したサイトとして示しつつ、NTTグループの企業やJISの順守を義務づけられている地方自治体のサイトを診断し改善するビジネスを開拓していく考えだ。
「障害を持っていることが強みにもなる仕事。単にサイトづくりの技術を覚えるだけでなく営業的なノウハウも身につけて、稼げる人になってほしい」と丸山社長は期待している。
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