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バリアフリー 2005年9月15日号
写真を拡大 クラブで運営するパソコン教室は週に5回。定員16人の小さな教室では毎日熱気に満ちた授業が行われる。メンバー同士のイベントも多く、年末と夏休みには全員でのパーティー、秋には文化祭も開かれる。
教室の前で豊川弘会長(右)と二宮さん。二宮さんがワードで作った戯曲が披露された。
文・写真 佐橋慶信
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教育講座出身者で作る平均年齢約70歳のパソコンクラブ
今や、高齢者を対象とした生涯学習施設は全国の津々浦々に点在している。兵庫県尼崎市でも「財団法人 尼崎市高齢者生きがい促進協会」が、地域の高齢者の教養講座や健康講座などを開催している。この中にはパソコン講座も組み込まれているが、この講座を卒業した人々によって発展的・自主的に運営されているクラブもある。それが、PCN(パーソナル・コンピューター・ネットワーク)クラブだ。
PCNクラブは「パソコン基礎」「ワード」といった講座を修了し、さらに自宅でインターネットに接続し、メールの送受信ができなければメンバーには入れない。連絡にはメーリングリストが使われているので、メールの使いこなしも当然必要だ。1998年に十数人でスタートした。現在でも200人程度と人数は抑えぎみ。平均年齢は約70歳だ。
PCNクラブでは、同じような年齢のパソコン初心者を対象に、メンバーが自主的にパソコン教室を開いている。メンバーがすでに修了した講座の続きという位置付けだ。カリキュラムからテキストまでメンバーによる完全な手作りで、テキストの分量は市販のものの数倍程度もある。「コピーする」「貼り付ける」などの記述ではなく、わざわざ「ファイル」―「コピー」と記述し、画面を見た時に混乱しないように配慮している。もともとがマウスの握り方からパソコンを学び始めたメンバーばかりなので、初心者の「わからないところ・混乱するところ」に気配りが行き届きやすいようだ。
パソコンを使いこなし
人生をより豊かにする
定員16人の講座は全部で11グループあり、それぞれに数人のトレーニングスタッフがつく。これらのスタッフによる個別指導スタイルで授業が進むので、細かいサポートができる。近隣の小学校のコンピューター授業などPCNクラブ以外の一般の講座にも、スタッフがボランティアで手伝いに出かけることもある。
もちろん、PCNクラブは講義や講習だけを活動内容としているわけではない。パソコンを自作したメンバーもいるし、老人会の会報や、近所の飲食店のメニューなどをワードで作るのもお手の物だ。それぞれが、パソコンを通じて「できること」の範囲を広げている。
メンバーの二宮フミ子さん(65)が手にするのは、自作の戯曲の原稿だ(写真下)。10日ほどで40枚を完成させたという。本文はワードで原稿用紙にレイアウトし、表紙はワード・アートで整えられている。二宮さんも講座に入るまではマウスの持ち方もわからなかったが、今では趣味に活用するまでになっている。
また、メーリングリストを通じてクラブに出席できないメンバーとも連絡が取り合えるので、メンバー同士はかなり密接につながっている。クラブ歴4年の太繁雄さん(69)は、パソコンメーカーのサポートに何度も電話して一人で苦しんだ経験もある。PCNクラブの仲間たちにこうしたマシントラブルを相談して、救われることも多い。
高齢者は「パソコンが苦手」と思われがちだが、PCNクラブのメンバーのように、講座でパソコンスキルを身につけ、社会貢献や趣味の分野へ積極的に活用している人々もいる。コンピュータークラブといえば、PC黎明期にはパワーユーザー中心に運営されていたものがほとんどだったが、現在はPCNクラブのような教養講座から発展した地域密着型のパソコンクラブが、あちこちで発生している。高齢者が自然体でパソコンとつきあい、社会へ貢献できる場が、広がり始めているのかもしれない。
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