稀代のスケーター・羽生結弦を写真家の蜷川実花が初めて撮り下ろしたのは、2018年。二人の表現者による写真がもたらした衝撃はまたたく間に世界を駆け巡った。羽生がプロに転向した2022年以降、蜷川は羽生を1年ごとに撮り続け、24年11月1日にはオールモノクロ写真集『Shin』、オールカラー写真集『Gi』が2冊同時に世に放たれる。AERAが目撃したその軌跡を振り返る。
当時23歳だった羽生結弦と蜷川実花による、初めてのセッション。青いバラが敷き詰められたセットのなかで、しなやかに横たわった。蜷川の用意したセットを見て笑う姿にはあどけなさが残ったが、「演技をしているときのような表情をしてほしい」というリクエストを聞くと、瞬時に表情が切り替わった。
短い時間でしたが、『魅せられた』と
いう印象が強い撮影でした 蜷川実花
いう印象が強い撮影でした 蜷川実花
2018年 2月
平昌五輪で金メダルを獲得。男子で66年ぶりの五輪連覇を達成
7月
国民栄誉賞を受賞
11月
GPシリーズロシア大会で優勝
2019年11月
GPシリーズNHK杯優勝
2020年2月
四大陸選手権で初優勝
ジュニア、シニアの主要国際大会を男子で初めて全制覇
7月
国際スケート連盟が新設した「ISUスケーティング・アワード」最優秀選手賞受賞
2022年2月
北京五輪 前人未到の4回転半への挑戦
7月
プロ転向表明
プロ転向を表明した年の夏、羽生と蜷川の2度目の撮影が実現。カメラの前に立つと、スイッチが入ったかのように顔つきが変わる。用意されたセットの意味を自分なりに解釈し、衣装が生きる動きを見せた。しなやかな曲線を描いた一枚は、ボストン美術館でも展示された。
2022年11月、12月
初の単独公演「プロローグ」をぴあアリーナMM（横浜）、FLAT HACHINOHE（青森・八戸）で開催
2023年2月
スケーター史上初の東京ドームでの単独公演「GIFT」開催
3月
「notte stellata 2023」をセキスイハイムスーパーアリーナ（宮城）で開催
3月、4月
「スターズ・オン・アイス」大阪公演、岩手・奥州公演、横浜公演出演
5月、6月
「ファンタジー・オン・アイス」千葉・幕張公演、宮城公演、新潟公演、神戸公演出演
青の印象が強い羽生だが、この年はテーマカラーを赤に決めて撮影に挑んだ。真っ赤なバラの花は被写体の強さがあって初めて成立する。個性の強いバラを前にしても、羽生はその世界観を見事に演じきった。
羽生結弦という存在にこの服やセットを合わせたときに、どういう構図になるのかを客観視するようになりました。蜷川さんはどういう視点から写真を撮っていて、どういう雰囲気を受け取りたいのかなと考えながら挑みました
羽生結弦
羽生さんを撮影していると、ファインダーを覗きながら怖くなる瞬間があります。『この人はどこまでいくんだろう』と底が知れない、内側から出てくる表現力のすさまじさにいつも吸い込まれそうになります
蜷川実花
2023年11月～2024年4月
初の単独アイスツアー「RE_PRAY」をさいたまスーパーアリーナ（埼玉）、SAGAアリーナ（佐賀）、ぴあアリーナMM（横浜）、セキスイハイムスーパーアリーナ（宮城）で開催
3月
「notte stellata 2024」をセキスイハイムスーパーアリーナ（宮城）で開催
5月、6月
「ファンタジー・オン・アイス」千葉・幕張公演、愛知公演出演
4度目の撮影では、モノクロの世界で踊る羽生を蜷川のカメラが初めてとらえた。音楽に身を委ね、次々に動きを変えていく。圧倒的な表現力で見せたのは、これまでにない羽生の姿だった。
「心」と「技」をテーマに、8つのシチェーションで撮り下ろした。オールモノクロの『羽生結弦写真集 Shin』、オールカラーの『羽生結弦写真集 Gi』（いずれもAERA特別編集）を11月1日（金）に2冊同時発売
今年も蜷川実花さんに写真を撮っていただきました。いろいろなセットを用意していただいたので、それぞれの世界観を楽しんでいただけたらうれしいです。僕も一生懸命がんばりました！
羽生結弦
羽生結弦さんの撮影は回を重ねるごとにハードルが上がっている気がします。毎回、『必ずいいものにしよう』と思って臨んでいますが、今回も私の想像を遥か高く超える表現を見せていただきました
蜷川実花
- 11/1～11/12紀伊國屋書店新宿本店で大型展示スタート！
- 11/1～全国47都道府県＋台湾でパネル展スタート！
- 11/1『羽生結弦写真集 Shin』『羽生結弦写真集 Gi』発売＆特設サイトオープン！
撮影：蜷川実花
サイトデザイン・制作：福島未香子（朝日新聞メディアプロダクション）、飯島春奈（朝日インタラクティブ）
メイキング写真・動画：東川哲也、佐藤創紀、上田泰世（朝日新聞出版写真映像部）、高野楓菜
その他写真：東川哲也（プロ転向表明会見）、朝日新聞社
人形になった気分でした 羽生結弦