司馬さんの旅の出発地は、初めて訪れた琵琶湖北岸の海津。海津から奈良時代の官道をたどり、国境、疋田を経て敦賀に向かった。古代に、いまの中国東北部に興った渤海国の使節団が海を渡って敦賀に上陸、この街道を通ってはるばる海津にやってきたことに思いを馳せる。翌日、敦賀から海岸道路を北上して武生に向かった司馬さんは、海まで迫る大山塊の存在が北陸の日本史にもっとも重大な影響を与えたのではなかったかと、継体天皇や柴田勝家などの行動から分析する。入り江ごとにある集落のなかで、杉津の浜の美しさにひかれ、大良の水仙に室町文化が日本の文化の原型となっていることを考え、また、赴任する父とともに武生に来た紫式部を思う。武生からは北国街道を南下。栃ノ木峠を越え余呉湖へ至ると、羽衣伝説と渡来人について考える。そして木ノ本を目指す途中、勝家と羽柴秀吉の賤ケ岳合戦に思いをめぐらし、秀吉の勝因を考えつつ、旅を終える。