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炭団坂
武蔵野台地の東縁にある本郷界隈は、台地に大小の谷が刻まれた坂の町である。司馬さんは、坂を幾度となく上り下りしながら、その地が経てきた歴史を感じようとする。まず、縄文時代には入り江だった上野・不忍池から"陸地"へと無縁坂、切通坂、弥生坂を上る。台地の頂上には東京大学がある。当時、旧加賀藩邸の発掘調査が行われていた東大医学部付属病院構内を訪れ、また、近隣の屋敷跡や寺社で高島秋帆や最上徳内などの江戸時代の偉人を思う。さらに森鷗外や夏目漱石の小説の舞台でもある団子坂の藪下の道、若き日の正岡子規が寄宿した「常磐会」跡などをめぐる。最後に漱石の三四郎を取り上げ、三四郎池の畔にたたずみながら、寺田寅彦や明治期の化学者に思いを馳せる。