ここから本文エリア

國華清話会 第2回特別鑑賞会

鑑賞風景

(1)村山邸御殿棟書院における「レパント戦闘図・世界地図屏風」鑑賞風景


鑑賞風景

(2)書院床における「稚児大師像」及び梁階筆「踊布袋図」鑑賞風景

 平成15年(2003)6月1日(日)、國華清話会第2回特別鑑賞会が神戸市の村山邸ならびに香雪美術館で開催された。

 特別鑑賞会に先立ち、まず水尾比呂志氏により、「國華と村山・上野家」と題する特別講演が行われた。講演では、フランスの『ガゼット・デ・ボザール(Gazette des Beaux-Arts)』に次ぎ世界第2位の長寿を誇る美術雑誌である『國華』と、それを終生支援しつづけた村山龍平と上野理一という朝日新聞社の創業者の親密な関わりが報告された。

 特別講演ののちは、本誌創刊号から1274号までの約5万ページをデジタル化した國華DVD−ROMのデモンストレーションが催された。拡大・縮小も自由自在な高精細デジタル画像とお目当ての論文や図版に瞬時にして辿りつける便利な検索システムに、参加者たちからは感嘆の声が上がった。

 その後、新緑が薫る村山邸の庭園において昼食がとられ、午後からは近代数寄屋建築の代表作でもある村山邸御殿棟にて特別鑑賞会が開催された。書院に立てまわされた重要文化財の「レパント戦闘図・世界地図屏風」(本誌第766号掲載)のまえでは、辻惟雄氏により、キリスト教連合軍とオスマン・トルコ軍の激戦を描いたこの華麗かつ不可思議な南蛮美術の魅力が紹介された。また床には、「稚児大師像」(重文/本誌第42号掲載)と梁階筆「踊布袋図」(重文/本誌第152号掲載)という和漢の逸品が並び掛けられ、参加者は床の間に上がっての間近な鑑賞という眼福が得られた。

 このほか書院には、酒井抱一筆「十二ヶ月図短冊帖」や大名物の唐物茶入・薬師院肩衝、「毘沙門天像」(重文/本誌第868号掲載)、「病草紙(小坊師の幻覚を生ずる男)」(重文/本誌第167号・1039号掲載)といった日本・東洋美術の傑作が惜しげもなく飾られ、参加者たちの間では名品談義に花が咲いた。

 書院2階の茶席では、茶が振る舞われ、なかでも茶碗・燕庵井戸は、手にとっての鑑賞という贅沢なひとときを味わうことができた。

ガラスケースという〈フィルター〉を通さない、古美術たちとの親密な時間。名品の息づかいまで聞こえてきたような、至福の休日であった。