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國華清話会 第7回特別鑑賞会

鑑賞風景

第7回五島美術館(平成17年11月28日)


 平成17年(2005)11月8日(火)、7回目を迎えた國華清話会鑑賞会が東京・世田谷の五島美術館を会場に催された。

 午前11時より別館講堂におよそ100名の会員が集い、会員総会が行われた。はじめに辻惟雄國華主幹が挨拶に立ち、このたびの開催にあたり格別の厚意を頂いた木下久一郎五島美術館館長、名児耶明学芸部長をはじめとした五島美術館の方々へ謝辞が伝えられた。次いで木下館長が、、清話会のために特別に出品された約20点の墨跡や絵画、6000坪から成る庭園、開催中の秋の特別展「やまとうた一千年?古今集から新古今集の名筆をたどる」の鑑賞を併せて楽しんでいただきたいと話された。清話会事務局からは大塚芳正國華清話会事務局長が、清話会3期目の収支および運営状況を報告し、承認された。

 続いて、今回の清話会をプロデュースされた名児耶学芸部長による「五島慶太の蒐めたもの」と題される特別講演が行われた。五島美術館は、一般的に「源氏物語絵巻」や「紫式部日記絵詞」、また茶道具の美術館とイメージされているが、実は書や古鏡のコレクションが最も充実していると指摘され、従来の認識と実際の蒐集品の構成との相違を、コレクション形成史に照らして具体的に興味深く解説された。また清話会のために選んだ作品は、創業者・五島慶太氏の蒐集の原点となり、優れた質と量を誇る写経や墨跡を中心に構成されていることが説明された。

 見晴台庭園からの眺望を楽しみながら昼食をとり、午後からは別館講堂と庭園内に点在する茶室を会場に、特別鑑賞会となった。茶室・古経楼では、広間の床に「麻布山水図」と「牛乗祖師図 賛清拙正澄」が掛けられ、脇床に「松鶴文蒔絵硯箱」が置かれた。隣室の床には「尹大納言絵詞」と俵屋宗達筆「東下り図」が飾られた。小間の松寿庵の床には無準師範墨跡「茶入」二大字が掲げられ「胡銅大曽呂利花生」が置かれた。呈茶席となった富士見亭では、床に本阿弥光悦筆「菊下絵和歌短冊」と「呉須鷹香合」、脇床には紹鴎所持「亀甲蒔絵棗」が飾られ、空気の澄んだ日には富士が見えるという大きな窓からの眺望を楽しみながら、お茶が堪能された。

 別館講堂の会長室には、床に古林清茂墨跡「餞別偈」(国宝)が掲げられ、「紫紙金字華厳経」(重文)が広げられた。茶室の大広間の床には、大燈国師墨跡「梅溪」二大字(重文)と伝藤原行成筆「升色紙」が掛けられ、中央の長机には、「久能寺経序品」(重文)と「染紙帖」が大きく広げられて、写経や手鑑の繊細な筆跡や料紙装飾の魅力が間近で鑑賞された。隣室の小間には、床に清巌宗渭墨跡「萬里一條鐵」と脇に「粉引茶碗 銘呉竹」が飾られた。

 予備知識よりも作品の放つ力にじかに接していただきたいという五島美術館の趣旨は、書を中心とした各々の作品のもつ迫力に間近で触れた会員諸氏に、充分に伝わったのではないだろうか。好天に恵まれた爽やかな秋晴れのもと、五島美術館の全面的な支援による第7回鑑賞会の充実した一日は、盛会のうちに終了した。