第 1 回
Easyimage!2025年02月03日 掲載
就職活動をはじめるためには、いわゆる「自己分析」が大切です。面接を通過するためには、自分の人生をふり返って、自分がどういう人なのかを言語化する必要があります。「ありのままの自分」を相手に伝えることが大切だよ。そんなことを、どこかで耳にしたことがあると思います。
しかし、そもそも「ありのまま」とはなんでしょうか。私の「ありのまま」なぞ、ひどいものです。家にひきこもってばかりで、友だちの少ない私。これをそのまま面接官に伝えても、よい反応がもらえるとは思いません。だから、私は少し考えかたを変えてみました。
例えば、引きこもりにもかかわらず私が何度も旅をして訪れる場所の話や、人付き合いが悪いにもかかわらず私が10年間大切にしている友人の話。そちらの方にこそ私の「ありのまま」があるのだと思って。
私は「ありのままの自分」とは、「自分が一番好きな自分の姿」だと、開き直って考えています。そのくらい、気楽にいきましょう。
近況
一人旅で、はじめて奈良を訪れました。この県で何よりも印象的だったのは、ほんとうにたくさんの「鹿」がいることです。噂には聞いていましたが、ここまでとは知りませんでした。スマホをせんべいと間違えて食べようとする鹿。信号がかわるのを律儀にまつ鹿。ばかなのか、かしこいのか。謎は深まるばかりです。
第 2 回
コピー1枚とて2025年03月03日 掲載
私は大学3回生の夏から、エントリーの時期の直前まで、ある企業の編集部のインターンに参加していました。もちろん、その時間は編集者になりたかった私にとって、非常に実りのあるものでした。しかし、毎週2日、貴重な就活の時間を原稿の校正や資料のコピーに費やすことに不安がなかったとは言えません。この時間をもっと具体的に、就職につなげるために使いたいと感じていました。
そこで、一工夫。私は例えば、編集者さんに校正を頼まれたときはなるべく原稿の感想を伝えたり、コピーした資料が何に使われるのか聞いたりして、ごういんに会話を広げました。すると、そこから世間話に花が咲いて、一緒にランチに行くことに。出版業界のあれこれを教わり、就職活動の相談にのってもらいました。
我がごとながら、すこし回りくどい就職活動をしていたと思います。ただ、伝えたいのは就活にもいろいろ方法がある、ということです。「different strokes for different folks.」みんなそれぞれで良いのです。
近況
上野に、「モネ展」を見にでかけました。モネは、水面に浮かぶ睡蓮を描いた連作が有名ですね。ところで、この『睡蓮』のうちのある一作はパリの美術館において、なんと長年上下が逆さまになって展示されていたそうです。私はこの小話が好きです。そのとき『睡蓮』は、もっとも示唆的だったと思うのです。
第 3 回
自愛と中指2025年03月10日 掲載
就職活動において大切なのは、自愛と中指です。
苦労して書いたエントリーシートにはたった数行のお祈りメール、笑顔で終わったはずの面接の結果通知が来ない。就活は学校の試験とはちがって、自分の何がだめで、何をどうすればよかったのかが明確には分かりません。私たちは、その冷たく、重い理不尽の塊をなんとか飲み下す必要があります。だからせめて、好きな音楽を聴いて本を読み、運動をして、友達とお酒でも飲んで、その塊を意識しないことが大切です。これから就活に挑むみなさん、そして今も励んでいるみなさんは、ほんとうに、ご自愛くださいませ。
とはいえ、どんなに消化しようとしてもけっきょく、その塊はどろどろになってみなさんの胃に溜まっていきます。ならばせめて、その泥は次の企業さまの面接に挑むための燃料にしましょう。その面接がうまくいかなくても大丈夫です。もうみなさんは、企業さまに向かって笑顔で、右手の中指を挙げられるようになっているでしょうから。
近況
今、一足さきにこの会社でアルバイトをしています。最近はお手伝いした書籍の奥付に、私の名前が記載されました。うれしい。奥付に名前がのるというのはやはり、特別ですね。ですが、これから何冊も本を作っても、それを特別に感じることができるでしょうか。特別じゃなくなっても、特別な気持ちを大切にしたいですね。
第 4 回
こうして出逢ったのも、何かの御縁……?2025年04月01日 掲載
しょうじきにいえば、私はインターン先の企業に就職する気まんまんでした。
1年間まじめに通ったし、社員の方もいっしょに働きたいと言ってくれている。選考はらくらく通過できるだろう。しかし、そんな気もちで社長面接に挑むと、翌日にはお祈りのメール。しかも、季節はすでに三月の末で、エントリーを締め切った企業もおおいなか、私は就職活動を再開しました。
すぐに気もちを切り替えて就活に臨めたとは思いません。それでも、編集者になるという目標を諦めるつもりは全くありませんでした。どろどろのお腹をさすりながら、家の本棚とにらめっこして、目についた出版社にとにかく申しこみはじめました。そのとき目に留まったのが、私の大好きな森見登美彦先生の小説『聖なる怠け者の冒険』。「そういえば、朝日新聞出版ってあったな。」就活サイトを調べると、エントリーシートの提出はもう間近。いそいで書きあげ、けっきょく提出できたのは締め切りの10分前でした。
まったくもって情けないエピソードで、申し訳ないです。ただ、こんな私でも受かりました。気楽に申し込んでみてはいかがでしょうか。
近況
本棚を整理していたところ、でてきました。これです。そういえば、私は同じく森見先生の『夜は短し歩けよ乙女』の世界に憧れて、京都大学を受験して落ちて浪人して落ちたことがありました。人生の、それもけっこう大切な場面に森見先生はいらっしゃいますね。何はともあれ『聖なる怠け者の冒険』、ぜひお読みください!
第 5 回
美味しいペペロンチーノのつくり方2025年04月14日 掲載
「美味しいペペロンチーノのソースをつくるには、オリーブオイルとパスタを茹でた塩水の比が重要なんです!」
この会社の面接中、趣味についての質問で、そんな話をしたことを覚えています。今考えると、もっと他のことを話せばよかったと思います。ただ、試験官のみなさんは笑ってくれました。ありがたいことです。
もちろん、自分の好きな本の話や、今後の出版業界に必要なことなど、出版社の面接らしい話もしました。ただ、面接では自分の思いもよらないところから会話の花が咲くことがあります。自分の過去や考えを論理的に話すだけでなく、相手との会話を楽しむことも大切なのかもしれません。
思えば、朝日新聞出版にかかわらず、面接のときはあらゆることのバランスを考えていたように思います。この質問にはどれくらい論理的に答えて、どれくらい感情を伝える?この人にはどれくらいかしこまった言葉づかいで? 正解はたぶんありません。何回も失敗して、あなただけの、そして相手のお口にあう「ペペロンチーノ」をつくってみてください。
近況
一年ほどアルバイトをしていた出版社を、卒業しました。写真は編集部の方々からいただいたボールペンです。黒赤青の、フリクションのボールペンです。これから私は、このペンで原稿を校正します。そしていつか、このペンで自分の本をだします。それが編集部の皆様への、最大の恩返しになると信じていますから。