高校生を知る「大学案内」編② 誌面デザインは志望校選びに影響する?


写真はイメージ(Gettyimages)


5月半ば頃から、各校の大学案内も最新版に切り替わりましたね。
受験生やその保護者にとって、大学案内は志望校選びにおける大事な資料。内容はもちろん、表紙やキャッチコピー、誌面デザインも、その大学の雰囲気を印象付ける要素となります。

今回のブログのテーマは「大学案内」の中身について。
高校生にいちばん読まれているページは? どんなデザインが読みやすい? 印象がよかった大学案内、悪かった大学案内は?

全国の高校1~3年生を対象に「学校案内に関する高校生の意識調査」を行っているマイナビ進学総合研究所研究員の青木湧作さんにお話を伺いました。

大学案内はどうやって読む?

○データ:「学部学科」や「学びの特徴」「学べる内容」の説明ページにおいて、どんなキーワードに目が引かれますか?

「学校案内に関する高校生の意識調査」(マイナビ調べ)


「取得できる資格名、取得・合格率、資格サポート」「科目一覧、カリキュラム」というキーワードがよく読まれていることが分かります。逆に、「PBL(プロジェクトベースドラーニング)」「産学/産官学連携」はあまり注目されていないという結果になっています。

青木さん:高校生にインタビューしたところ、「PBL」や「産官学連携」などは「その言葉自体がよくわからない」という意見が多く聞かれました。たとえば「地域や企業とつながりながら実践的に学ぶ」などと多少わかりやすく書かれていれば、気になって目をとめるかも、と。読ませたい内容は、誌面デザインやキャッチコピーの入れ方で工夫をすることが大切だと思います。


○データ:(学校案内を読む目的別に)その目的の場合、学校案内をどのように読んでいますか?


* 「Q.どんな目的で学校案内を読むことが多いですか?」に対して「様々な学校を幅広く知る目的」「ある程度絞り込んだ志望校群を比較する目的」「一つの学校について詳しく知る目的」と回答した者のみ対象。「学校案内に関する高校生の意識調査」(マイナビ調べ)


幅広く知るためや、比較するためなど、志望校探しの段階で読む人は、「最初から順にパラパラ」めくり、気になったページだけを読む人が圧倒的に多いことがわかります。

青木さん:特に読ませたい場所に手を止めてもらうには、台割構成(順番)や、ページごとの見出しの工夫が大切だと思います。また「気になる箇所だけ読む」傾向もあるので、各ページに目を引くキーワードを散りばめる必要性もありそうです。

理想の文字量は? QRコードは活用する?

○データ:あなたが学校案内に求める、見開き1ページあたりの文字量は次のうちどれですか? 


「学校案内に関する高校生の意識調査」(マイナビ調べ)


学校案内に求める見開き1ページあたりの文字量を、3種類の見本を提示して聞くと、「写真と文字のバランスが取れている」見本が7割弱の回答割合となりました。そもそも大学案内には情報を求めているため、ある程度の文字量はあった方がいいようです。


○データ:学校案内の中にあるQRコードを読み取ったことはありますか? 


「学校案内に関する高校生の意識調査」(マイナビ調べ)


学校案内の中にあるQRコードを読み取ったことはあるかを聞くと、「ある」が34.8%、「ない」が41.3%の回答割合でした。「ない」の方が「ある」を上回る結果となったのは少し意外です。


○データ:「QRコードを読み取ったことがある」と答えた方にお聞きします。それはどのような情報コンテンツでしたか? 

「学校案内に関する高校生の意識調査」(マイナビ調べ)


学校案内のQRコードで読み取ったコンテンツを聞くと、「学校全体の特色・取り組み」「イベントの申込」「学部・学科の内容」という回答が多数に。確実に読みたい情報や、申込み等ツールとして活用できるものは、QRコードが有効のようです。

印象がよかった大学案内、悪かった大学案内は?

「今までで最も良い印象/悪い印象に残っている学校案内について、その内容や理由を教えてください」という問いについて。

「印象がよかった学校案内」の理由には以下があげられました。

  • 写真・生の声・実例で雰囲気や魅力が伝わる
  • 詳しい情報がしっかり載っている
  • 表・グラフ・図でわかりやすく説明している
  • 写真と文字のバランスが取れている

​​​​​​​「印象が悪かった学校案内」の理由には以下があげられました。

  • 雰囲気重視で具体的な魅力がわからない
  • 情報が足りない・シンプルすぎる
  • 情報が多すぎる・わかりにくい
  • 文字が多すぎて読みづらい
  • 写真と文章説明が照らし合わせにくい

青木さん:前回のブログでもお伝えしたとおり、大学案内は「知りたい情報を得る」「他の大学と見比べる」ためのツールとして活用されています。そのため、誌面デザインも個性的なものよりは、読みやすく、知りたい情報を得やすいデザインが求められているようです。
高校生と一緒にいくつかの大学案内を見比べていたときに、前後のページと比べてデザインの雰囲気がかわったり、印象的な見出しがついていたりするページには興味をもって手を止める、という傾向がみられました。


大学案内を制作をする立場からすると、ついインパクトや個性のあるデザインで他の大学と差別化したくなってしまいます。しかし思った以上に「読みやすい」「情報がきちんと伝わる」ことが重視されていることが分かりました。

次回のブログでは、「高校生を知る「大学案内」編③ 紙派? WEB派? それぞれの活用法は?」をお届けします!


(文/「大学ランキング」編集部 国府田直子)


【今回ご紹介したデータの詳細】
「学校案内に関する高校生の意識調査」
調査主体:株式会社マイナビ
調査回収期間:2024年2月22日~2024年2月29日
調査対象者:マイナビ進学会員
有効回答者数:1,825 名
https://souken.shingaku.mynavi.jp/research/other_pamphlet/

【お話をお伺いした方】
【お話をお伺いした方】
マイナビ進学総合研究所 研究員  青木湧作さん 高校生の進路選択に関する調査全般に携わる。前職はトヨタ自動車株式会社。中南米地域の事業企画を担当。京都大学経済学部出身。2014年マイナビに入社。高校訪問を通じ進路サポート活動に従事。その後、上級学校向け募集管理システムを扱う部署や事業戦略、コンテンツ編集の部署を経ながら、2022年より現在の調査業務に従事。
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