書籍
焼野まで
村田 喜代子
ISBN:9784022513588
定価:1760円(税込)
発売日:2016年2月5日
四六判上製  256ページ 
品切れ・再販未定

東日本大震災から数日後、作家の村田喜代子さんの体には子宮体ガンが発見された。本作はその後の治療の日々の実体験をもとに、地上の災厄と、我が身に巣くう病がもたらす、数奇な魂の変容を描いた傑作長編小説。
作者の分身的存在である「わたし」は、九州の最南端の地の放射線センターで、子宮体ガン治療のため、1カ月間の特殊なエックス線照射を受けている。一日一回数分間の照射が終わると、「わたし」は借りているウィークリーマンションに戻るだけの日々である。エックス線による体の消耗は少しずつ進み、滞在しているこの町は、火山の度重なる噴火で灰の臭いが充満している。
「わたし」の治療中の慰安は、図書館に勤めていた時の元同僚で、退職後、肺ガンで闘病中の八鳥誠である。脳や骨盤に転移したこのガン友達から、「わたし」は携帯電話で種子島のロケット打ち上げの光景を聞き、体は日増しに消耗しながらも心は虚空の高みへ飛ぶことができた。
滞在型のエックス線治療には、全国からガン患者がやって来る。「わたし」はそんな人々と治療の合間に火山を見に行く。噴煙を吐く火口を背景に、病でこの地に来て出会った患者たちは記念写真を撮る。永遠の一瞬が収められる。やがて八鳥は亡くなり、放射線センターのガン仲間も一人また一人と、照射を終えて去って行く。そんな「わたし」の放射線宿酔の夢にあらわれるのは、祖母や大叔母など今は亡き女性たちである。
見えない光線に焼かれる一カ月の間に織りなす生者と死者たち。人間の体内のガン細胞から広大な宇宙まで、未曽有の3・11の災厄と病の狭間で女性作家の比類無い感性がとらえた前人未到の問題作。

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