「3・11」の大震災以降、ことばはどう変わったのか。
この世の「地獄」に接した二人の作家、ジャン・ジュネと石牟礼道子は、その「地獄」をどう描いたのか。川上弘美はなぜ1993年に発表した『神様』を『神様2011』にリメイクしたのか。アメリカの活動家ナオミ・クラインの政治的スピーチ『ウォール街を占拠せよ』と太宰治の『お伽草子』は、本質的に似ているところがあるのではないか……。
●「問いのない答え」(「文庫版あとがき」より抜粋)
いま、この、五年ほど前から、集中的に書かれた、自分の文章を読み返して、そうだったんだ、とぼくは思った。ぼくも怖かったんだ。なにが起こっているのか、ぼくにも、ぼくの周りの人たちにもわからなかった。それでも、なにか、そこで助けになることばが必要であるように、ぼくには思えた。だから、ぼく自身もことばを、無理にでも作りだし、そして、そのとき、読む必要があるように思えたことばを探した。無我夢中だったんだ。
いま思えば、それもまた、「問いのない答え」だったのかもしれない。真暗ではなく、けれども、明るくもない、ぼんやりとして、霞がかかったような世界の中で、とりあえず、なにかを言おう、ことばにしようとしていた。
本書は、文章教室を進化させるタカハシ先生が、詩や小説、政治家の演説などを自在に引用しつつことばの本質に迫る、これからの日本を考えるためにも必要な文章読本である。
●目次より
I 非常時のことば ことばを失う/すべて自分の頭で考える/この世の地獄の美しさ
II ことばを探して 降ってくる放射性物質が、くっついた文章/「現実」の文章
III 二〇一一年の文章 「文章」が生まれる場所/「あの日」からの文章 など
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